三浦展『東京は郊外から消えていく!:首都圏高齢化・未婚化・空き家地図』(光文社新書 2012)を読む。
中学校や高校の授業では,都心の過密化に伴う郊外へのドーナツ化現象や,郊外に移転できない低所得者層が都心部周辺に居住するインナーシティ問題,タワーマンションに象徴される近年の湾岸エリアの再開発や都心回帰など,都市型ライフスタイルを公式化された定理のように類型化して学ぶ。
本書では,首都圏を都心3区や城南4区,横浜東部京急線沿線,東急田園都市線沿線,中央線多摩,南武線,さいたま市,埼玉南部など,一都三県を29のブロックに区分し,さらに性別や世代,未婚既婚,子どもの有無,職場との距離や親との同居などでクラスターを分け,それぞれのクラスターの消費行動や地域活動の参加状況について検討を加えている。
著者によると,既存の都心部がチェーン店やショッピングモールによって郊外化され魅力を失っていたり,逆に郊外同士の差異化による新たな魅力が誕生していたりして,人口減少の時代ゆえの新しい首都圏の姿が浮かび上がってくる。最後に著者は次のように述べる。
不動産価格が上昇している時代には,家はどんどん売られていき,結果として住宅地全体としてちぐはぐな,バランスの悪いものに劣化していった。
しかし今後は,不動産価格が低下し,売ってももうからないじだいだからこそ,不動産をコミュニティ全体のために活用するという選択肢が可能になるのである。すぐれた住宅地マネジメント組織が,オールドタウンからゴーストタウンになる危機に瀕した住宅地をゴールドタウンに変えていくなら,日本の住宅地の未来は明るくなっていくであろう。