月別アーカイブ: 2019年4月

『レアメタル入門』

中村繁夫『レアメタル入門:現代の山師が挑む魑魅魍魎な世界』(幻冬舎新書)を読む。
地球科学や物質化学の専門家ではなく,レアメタルの輸入買い付け会社に30年間勤務した後,レアメタルトレードの専門会社を立ち上げた著者が,中国やアフリカを舞台に繰り広げられるレアメタル市場の現状を語る。結論は簡単にまとめると,レアメタルは市場が未整備な面があり,産地も偏在しているので,国家がテコ入れして官民一体で開発にあたっていくべきだというものである。
中国は国家をあげてアフリカのレアメタル開発に乗り出しているが,習近平国家主席は清華大学化学科出身,胡錦濤は前国家主席は清華大学水利工程科出身,温家宝前首相は北京大学地質科出身など,中国の政治家のトップは技術系が多く,資源問題に精通している。一方日本にはレアメタルに精通した政治家は少ない。
昨日トヨタがハイブリッド技術に関する特許を無償開放すると述べたが,ハイブリッド車の生産には,ネオジム,ディスプロシウム,テルビウム(希土類)といったレアメタルが不可欠である。これらのレアメタルは100%中国に依存している。さらにこうした元素を取り出す過程で,江西省を中心に深刻な環境汚染が進んでいる。環境に優しい自動車という宣伝文句であったが,消費者は原料の産地周辺の環境やそこで働く労働者の労働状況といった点にまで目配りをしていきたい。

「北京に9月末巨大第2空港」

本日の東京新聞夕刊に,北京市の郊外に巨大な首都第2空港が開港するとの記事が掲載されていた。シンガポールや香港,インチョン空港などのハブ機能をも有すると慣れば,人だけでなく貨物機も拡充し,東アジアの物流は大きな変革を迫られる。

「世界の飢餓1億1千万人」

本日の東京新聞夕刊より
解説記事によると,世界には食料不足により飢餓にまでは至らなくとも栄養失調状態の人が推計8億人以上いるとされている。また,干ばつや洪水などの自然災害は年々悪化の傾向にあり,アフリカ南部や南アジアでは慢性的な食料不足の一因となっている。世界食糧計画(WFP)などの報告書によると,42カ国の約1億4300万人には十分な食料がなく,自然災害などのきっかけがあれば簡単に飢餓に陥る可能性があると指摘されている。

3月にアフリカ南部を直撃したサイクロンも農地などに甚大な被害をもたらしている。モザンビーク,ジンバブエ,マラウイの3カ国の100万人以上に食料などの緊急支援が必要とされている。

太平洋北西部で発生した熱帯低気圧を「台風(タイフーン)」,大西洋北部・太平洋北東部・太平洋北中部で発生した熱帯低気圧を「ハリケーン」,インド洋北部・インド洋南部・太平洋南部で発生した熱帯低気圧を「サイクロン」と呼ぶが,海水温の上昇がもたらす巨大サイクロンによる被害は,日本にとっても他人事ではない。被害にばかり目が行くが,発生のメカニズムについても押さえておきたい。

 

「温室効果ガス 今世紀後半排出ゼロに」

本日の東京新聞夕刊に,パリ協定長期成長戦略懇談会が今世紀後半に温室効果ガスの排出を80%減らすとの提言を出したとの記事が掲載されていた。懇談会のメンバーに経団連の中西宏明氏が名前を連ねており,「脱炭素」の実現がもてはやされるあまりに,原子力発電が再び「クリーンエネルギー」として返り咲くことに対しては懸念を示しておきたい。
かつて,京都議定書の協約実現に向けた「チームマイナス6%」の掛け声のもと,地球環境に優しいという触れ込みで原子力発電開発がゴリ押しされてきた。果たしてその結果はどうだったのか。

温暖化防止の長期戦略
パリ協定は,目標達成のため,各国に温室効果ガス排出を少なくして成長する長期戦略を立案することを求めている。日本は昨年8月,安倍晋三首相の有識者懇談会を設置し,議論を進めてきた。今年6月,大阪市での20カ国・地域(G20)首脳会合前に策定することを目指す。懇談会は国際協力機構(JICA)の北岡伸一理事長が座長。トヨタ自動車の内山田竹志会長,経団連の中西宏明会長,富山市の森雅志市長ら計10人の構成。

『在日韓国・朝鮮人』

福岡安則『在日韓国・朝鮮人』(中公新書 1993)をパラパラと眺める。
20年近く本棚に眠っていた本を引っ張り出した。主に在日2世3世の調査から,彼らのアイデンティティを探るという内容なのだが,著者の専門である社会学の見地に立った専門書の体裁を取っており,いまいち入り込めなかった。