日別アーカイブ: 2019年1月5日

「日本、世界の来し方行く末」

本日の東京新聞朝刊に、政治学者姜尚中氏のインタビューが掲載されていた。非常に分かりやすい言葉で米中の動きや朝鮮半島情勢、グローバル化について語る。特に印象に残った点を書き留めておきたい。

―(グローバル化が進み、国家や国民は変わりましたか)
 国家は本来、自律性を持ち、国民の福祉や国益のために動いていくものです。
 しかし、グローバル経済ではマーケットが自己増殖し、国はそれをハンドリングできません。むしろグローバル経済に合わせて国が動いていく。国家の自律性は低下していきます。グローバルなシステムにどれだけ素早くタイムリーに対応できるか。それが国家に求められるなら即断即決がいいわけです。
 民主主義には時間がかかります。熟議してしっかり煮詰めていくのが民主主義だからです。しかし、民主主義にかかる時間や労力や無駄で、専制的な独裁に近いような者が政策決定をした方がグローバル経済の中では適応力を持ち得るという考え方に先進国も傾いてきました。そういう考え方をすると、米英よりも中国の方がいいということになります。上が決めたら、国民は文句を言わずに従う。即断即決でグローバル経済の変化に即応できる。非常に危険な考え方だと思います。

―(グローバル化と同時にナショナリズムも台頭しています)
 国民国家では国民が主人公です。国民があって国家がある。当たり前のことです。ところが、グローバル化の中でこの関係が逆転すると、みんな右へならえ、国がやろうとしていることに反対して不協和音をつくるなという議論が出てきます。
 グローバル化とナショナリズムは必ずしも対立しているわけではありません。対立しながら共鳴し合っている。グローバル化が進むとともに、みんな国に従おうという、ある種のナショナリズムも強くなる。グローバル化と、それに対する逆流現象、つまり、みんなが同じ方向に向かっていくというコンフォーミズム(画一主義)がせめぎ合っています。

「国民の前で公開議論を」

本日の東京新聞朝刊に、経団連の中西宏明会長のエネルギー・原発政策についての発言が掲載されていた。記事の中で、中西氏は日立製作所の会長を務めており、日立の英国への原発輸出計画を通じて、コスト面からの原発への逆風を身をもって感じており、このままでは原発輸出を成長戦略ととらえる安倍政権の政策に沿って海外の原発会社を買収した結果、大損失を被った東芝の「二の舞」になりかねないとの危機感もあるとみられると述べられている。また、日本の原発輸出はトルコやベトナムでも相次いで行き詰っており、コストが急低下している再生可能エネルギーに目を向けるべきだと示唆している。
以下、中西氏の発言である。

(原発の再稼働について)東日本大震災からこの3月11日で8年がたとうとしているが、東日本の原発は再稼働していない。全員が反対するものをエネルギー業者や日立といったベンダーが無理やりつくるということは、民主国家ではない。国民が反対するものをつくるにはどうしたらいいのか。真剣に一般公開の討論をするべきだと思う。
お客さまが利益を上げられていない商売で利益を上げるのは難しい。一方で、稼働しない原発に巨額の安全対策費がつぎ込まれているが、8年も製品をつくっていない工場に存続のための追加対策を取るという経営者として考えられないことを電力会社はやっている。

(日本のエネルギー政策について)日本のエネルギーの80%は依然として(原油・石炭・天然ガスといった)化石燃料に依存しており危機的状況にある。コストは高く世界から非難を浴びている。期待された再生可能エネルギーだが日本には適地が少なく極めて不安定な状況だ。太陽光も風力も季節性がある。次世代送電網のスマートグリッドも新しい投資が行われていない。打破しなければならない問題はたくさんある。だからこそ電力会社を巻き込んださらなる電力改革が必要だ。
政府のエネルギー情勢懇談会では電力会社を巻き込んで今後のエネルギー政策を検討し、討議をしてきた。原発についても議論を重ねてきたが、国民の前で、公開の本格的な議論をする必要がある。