橋本武『灘校・伝説の国語授業:本物の思考力が身につくスローリーディング』(宝島社 2011)を読む。
関西の有名進学校である灘中学校で50年に渡り、一冊の文庫本『銀の匙』を3年かけて読み解く授業を行い、公立高の滑り止めだった灘校を東大合格日本一へと導き、日本のリーダーたちを育てたという「伝説」教師の手による授業入門書である。
橋本氏は、中勘助の『銀の匙』を題材に授業を展開するにあたって、次の点を大切にしている。
- 寄り道する
- 追体験する
- 徹底的に調べる
- 自分で考える
本文中に出てくる意味の取りにくい言葉に注目して、日本古来の文化や言葉の世界へと「寄り道」をして、一つ一つの言葉の意味を深く拡げて調べさせる。また、凧揚げをしたり、駄菓子を食べたりして物語の世界を味わう。最後にタイトルを考えたり、ぴったり200字に要約したりして、自分のものにするまで読み込むという、トコトンこだわった授業内容である。
指定の教科書と定期考査が課せられる一般の公立高校でそのまま実践していくことは難しいが、言葉にこだわって脱線していく展開は参考となることが多かった。
橋本氏は以上のような3年間にわたるスローリーディングを実践していくことで身につく力をつぎのようにまとめている。
- 語彙が増える
- 自分で考える力がつく
- 文章力が向上する
- 記憶力がアップする
- 調べる力がつく
- 言葉に敏感になる
- 読み解く力が強くなる
- 好奇心が刺激され、学ぶことが楽しくなる