第77回芥川賞受賞作、池田満寿夫『エーゲ海に捧ぐ』(角川書店 1977)を読む。
表題作の他、「ミルク色のオレンジ」「テーブルの下の婚礼」の2作が収められている。3作品とも文学的なロマンポルノの原作のような内容で、話の脈絡が無く、ただ主人公の男の心理描写と官能小説顔負けの表現が続く。といっても興奮するようなエロスではなく、読んでいて面白い作品ではなかった。
あまり書くことも無いので、小説の中の気になった表現を引用してみたい。
さっきまで立てていたアニタの両ひざも今は前方に延び切って、脚を延ばしたまま、彼女の地中海を私の方に向けて思いきり拡げている。地中海の先端の秘密の岬が陽光をあびた蜜のように、なめらかに光っているのが見える。(「エーゲ海に捧ぐ」)
ナオミは私の方を用心深くうかがいながら、下唇を小さな歯で少しかんで見せると、不意にあお向けに上半身をのけぞらせた。そしてそのままの状態で立てたままの両膝を私の方に向って思いっきり開いてみせたのだった。光の帯が一つが少女の開かれた太腿の付根の間を泳いだ。光の粒がうっすらしたヘアーの上で反射し、幾分黒っぽくなりかけている外側の襞の奥に、赤みを増した彼女のみだらな領域が舌でも出したようにきらきら輝いていた。(「ミルク色のオレンジ」)
私の方はテーブルの低すぎる天井に頭部を抑えられたまま、すっかり自信を回復した太陽の子を、薄い毛で覆われた果実の密の中へ挿入するというわけだ。(「テーブルの下の婚礼」)