月別アーカイブ: 2013年10月

「ヘイトスピーチは差別」判決

昨日の東京新聞夕刊一面と、本日の朝刊一面に、「在日特権を許さない市民の会」(在特会)が行った京都朝鮮学校周辺でのヘイトスピーチを巡る判決についての記事が掲載されていた。
記事によると、2009年12月から2010年3月の間の3回にわたる京都朝鮮学校近くで、「朝鮮学校を日本からたたき出せ」「スパイの子ども」といった人種差別発言を拡声器で連呼し繰り返し授業妨害を行ったことに対し、学校法人京都朝鮮学校が、学校周辺での街頭宣伝の禁止と三千万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、京都地裁は7日、半径200メートル以内の街宣禁止と1226万円の支払いを命じたとのこと。「在特会」側は表現の自由を主張していたものの、橋詰均裁判長は「ヘイトスピーチ」の内容そのものには触れず、在特会の街宣が「(日本も批准する)人種差別撤廃条約で禁止した人種差別に当たる」と指摘し、「示威活動によって児童らを怖がらせ、通常の授業を困難にし、平穏な教育事業をする環境を損ない、名誉を毀損した」として、不法行為に当たると判断している。

今回の判決は、「表現の自由」にあえて踏み込まず、侮蔑的で差別的な発言を人種差別と指摘し、示威的活動やインターネットでの映像公開を名誉毀損と認定している。その上、半径200メートル以内での禁止と明確に境界線を示した上で、かつ被告側に多額の賠償を命じている。2つか3つのテレビ番組でも概ね好意的に取り上げられていたが、私は大変画期的な判決だと思う。街宣車のスピーカーから発せられる爆音がぎりぎり届かない距離を示し、発言内容そのものを禁んずるのではなく、「人種差別撤廃条約」と民法の名誉毀損での2点できっちりと賠償を示している。行政や国家に対する反対デモの自由を認めつつ、民法709条、710条を論拠に、人種差別や生徒の権利に特段の配慮している。見事な大岡裁きといってもよいだろう。

また、一部報道では、日本ではヘイト・スピーチに対する法的整備が進んでいないのが今回の問題の原因だとの説明がなされた。しかし、現状の社会状況を踏まえると、そうした法的規制は諸刃の剣となるであろう。マイノリティ攻撃を防ぐためのヘイトスピーチ規制は、容易に国家・行政・司法への批判の声に対する封殺の論拠に転化していくであろう。私たちは表現の内容を十全に配慮しつつ、人権への配慮を考えていかねばならない。
それにしても、わざわざ法で規制するまでもなく、「そこまでは敢えて言わない」という日本人的な「暗黙の了解」で物事を済ますことができないものであろうか。「在特会」の構成員にこそ、「日本人の場の空気を読む美徳」を勧めたい。

ヘイトスピーチ
人種や民族、宗教などを理由に差別意識や偏見を抱き、激しい言葉で憎しみを表現すること。「憎悪表現」と訳される。在日韓国・朝鮮人が多く住む東京・新大久保や大阪・鶴橋で、一部の団体が「殺せ」「たたき出せ」などと叫びながらデモを繰り返し、社会問題化。これに反対する集団との乱闘事件も起きている。日本には法的規制がない。

『ほぼ日刊イトイ新聞の本』

糸井重里『ほぼ日刊イトイ新聞の本』(講談社文庫 2004)を読む。
2001年に刊行された単行本に加筆されたものである。「ほぼ日手帳」を使い始める前に、「ほぼ日」の背景について知りたいと思い手にとってみた。「ほぼ日」の創立前後の出来事と平行して、糸井氏の価値観や、ビジネスに対する思いがよく伝わってくる内容であった。糸井氏は49歳で「ほぼ日」を立ち上げている。私自身が40代を迎え段々その年齢に近づきつつあり、一人でもできるという自信を信頼して新しい分野に飛び込んでいくパワーに共感を覚えた。

『それでもぼくはやってない』

soreboku

地上波で放映された、周防正行監督・脚本、加瀬亮主演『それでもぼくはやってない』(2007 東宝)を観た。
最後まで全く笑いのない映画であったが、証言の信憑性だけが問われる痴漢冤罪事件の難しさがひしひしと伝わってくる良作であった。警察のメンツを潰さないために、警察が「捏造」した自白証言や証拠を鵜呑みにして起訴に持ち込む検察と、自己の保身、警察や検察との付き合いを優先させ、99.9%という確率で刑事事件の有罪を下す裁判所のありように真っ向から切り込んでいく。今回の地上波の放映枠では、最後に「告訴します」という力強い台詞の後に、長い戦いの果てに登場するドラゴンのように、最高裁が背景として映し出されエンディングを迎える。司法や警察行政の背後にあるどろどろした不気味な馴れ合い主義の公務員体質こそが裁かれなければならないのである。

「多文化進学ガイダンス in越谷」

多文化子こども学習塾主催の日本語を母語としない外国人生徒の「高校進学ガイダンス」に参加した。
高校入試制度や受験勉強のアドバイスなどしながら、ホームページによる情報提供が一般的になった現在でも、外国人特別選抜入試制度や高校のおける日本語サポートの情報などが必要な方に届いていない現状を知った。埼玉県では、日本人の生徒ですら塾に通ったり業者テストを受けたりしないと情報が入ってこないので、まして外国人にとってはなおさらであろう。
それにしても相手の言葉で話すことができれば、内容だけでなく信頼関係も作ることができるのに、と思うことしきりであった。

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