「ヘイトスピーチは差別」判決

昨日の東京新聞夕刊一面と、本日の朝刊一面に、「在日特権を許さない市民の会」(在特会)が行った京都朝鮮学校周辺でのヘイトスピーチを巡る判決についての記事が掲載されていた。
記事によると、2009年12月から2010年3月の間の3回にわたる京都朝鮮学校近くで、「朝鮮学校を日本からたたき出せ」「スパイの子ども」といった人種差別発言を拡声器で連呼し繰り返し授業妨害を行ったことに対し、学校法人京都朝鮮学校が、学校周辺での街頭宣伝の禁止と三千万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、京都地裁は7日、半径200メートル以内の街宣禁止と1226万円の支払いを命じたとのこと。「在特会」側は表現の自由を主張していたものの、橋詰均裁判長は「ヘイトスピーチ」の内容そのものには触れず、在特会の街宣が「(日本も批准する)人種差別撤廃条約で禁止した人種差別に当たる」と指摘し、「示威活動によって児童らを怖がらせ、通常の授業を困難にし、平穏な教育事業をする環境を損ない、名誉を毀損した」として、不法行為に当たると判断している。

今回の判決は、「表現の自由」にあえて踏み込まず、侮蔑的で差別的な発言を人種差別と指摘し、示威的活動やインターネットでの映像公開を名誉毀損と認定している。その上、半径200メートル以内での禁止と明確に境界線を示した上で、かつ被告側に多額の賠償を命じている。2つか3つのテレビ番組でも概ね好意的に取り上げられていたが、私は大変画期的な判決だと思う。街宣車のスピーカーから発せられる爆音がぎりぎり届かない距離を示し、発言内容そのものを禁んずるのではなく、「人種差別撤廃条約」と民法の名誉毀損での2点できっちりと賠償を示している。行政や国家に対する反対デモの自由を認めつつ、民法709条、710条を論拠に、人種差別や生徒の権利に特段の配慮している。見事な大岡裁きといってもよいだろう。

また、一部報道では、日本ではヘイト・スピーチに対する法的整備が進んでいないのが今回の問題の原因だとの説明がなされた。しかし、現状の社会状況を踏まえると、そうした法的規制は諸刃の剣となるであろう。マイノリティ攻撃を防ぐためのヘイトスピーチ規制は、容易に国家・行政・司法への批判の声に対する封殺の論拠に転化していくであろう。私たちは表現の内容を十全に配慮しつつ、人権への配慮を考えていかねばならない。
それにしても、わざわざ法で規制するまでもなく、「そこまでは敢えて言わない」という日本人的な「暗黙の了解」で物事を済ますことができないものであろうか。「在特会」の構成員にこそ、「日本人の場の空気を読む美徳」を勧めたい。

ヘイトスピーチ
人種や民族、宗教などを理由に差別意識や偏見を抱き、激しい言葉で憎しみを表現すること。「憎悪表現」と訳される。在日韓国・朝鮮人が多く住む東京・新大久保や大阪・鶴橋で、一部の団体が「殺せ」「たたき出せ」などと叫びながらデモを繰り返し、社会問題化。これに反対する集団との乱闘事件も起きている。日本には法的規制がない。

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