第143回芥川賞受賞作、赤染晶子『乙女の密告』(新潮社 2010)を読む。
多少意地になってここ近年の芥川賞受賞作を読んでいる。
京都にある外語大学のドイツ語の暗唱大会を間近にした「乙女」たちの信頼や裏切り、秩序、密告が、第二次大戦中の隠れ家でのアンネ・フランクを取り巻く複雑な人間関係を象徴するという一種冒険的な作品である。
しかし、現実のドタバタコメディドラマのような雰囲気と、ユダヤ人というだけで自己否定を迫られる若い少女の悲痛が、最後までうまく噛み合ないまま終わってしまう。
芥川賞が「荒削りな文章ながら輝きを放つ才能」に贈られる賞であるならば、この作品は納得できる気がする。
『乙女の密告』
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