やまだおうむ『風俗ライターが行く わくわく北朝鮮ツアー』(英知出版 2005)を読む。
英知出版から刊行される刺激的なタイトルの本であり、平壌市の監視の目の外にあるアングラな風俗の特集なのかと思い手に取ってみた。しかし、その期待は見事に裏切られた。北朝鮮(共和国)の観光ツアーに参加した著者が、板門店やチュチェ塔、万景峰、開城などの「観光地」で感じた違和感を丁寧に繰り返し説明する。やがて、その違和感は自国民の犠牲の上に外国に向かって虚勢を張る北朝鮮の政治に向けられる。
「その光景は、1950年代にアメリカで盛んに作られたB級SF映画に登場する核戦争後の世界を彷彿させる」と著者も述べるほど、北朝鮮という国自体が張りぼての世界であることがひしひしと伝わってきた。平壌中心部の地図も掲載されているが、良くできたアニメやRPGのマップを見ているような錯覚にとらわれる。