月別アーカイブ: 2010年4月

『古典がもっと好きになる』

田中貴子『古典がもっと好きになる』(岩波ジュニア新書 2004)を読む。
古典文法に拘泥する授業や、説教臭い内容ばかりの教科書を離れて、人間そのものの面白さを紡ぐ古典に触れようと述べる。「土佐日記」や「徒然草」、「堤中納言物語」などを例に使いながら、現在にも繋がるジェンダーやウイットを取り上げている。
橋本治『これで古典がよくわかる ハシモト式古典入門』(ごま書房)を参考文献として紹介している。

本日の東京新聞朝刊

本日の東京新聞朝刊のコラムも沖縄特集であった。本土復帰から2008年まで米兵やその家族が関与した事件が5584件にのぼり、さらに最近6年間で起きた交通人身事故は年間100件を超えるという。また、米軍機の墜落事故は2年に1件起こり、騒音被害に県民の6割が苦しめられ、演習での原野火災も08年には 18件も発生している。これだけの重大事故事件が起きながら「日米地位協定」によって、日本の司法制度では裁くことができない現実がある。
あとがきのデスクメモの言葉を引用したい。

本土では中国での邦人の死刑執行(麻薬密輸で即決で日本人が死刑にされた)が論議を呼んでいる。それに比べ、沖縄県民が被害を受けた米兵による事件への関心は薄い。この心理はどこかゆがんではいないだろうか。民主党は「対等な日米関係」をうたい、首相は「友愛」を説いた。そのいずれもが沖縄に当てはまる。 言葉の重さが試されている。

「北朝鮮の有事の危険度」

本日の東京新聞朝刊に「北朝鮮の有事の危険度」と題したコラムが掲載されていた。
日本のマスコミでは、脱北家族の報道などで事あるごとに、北朝鮮の兵力や政治体制の脅威が強調される。しかし、現状は、戦闘機のほとんどが旧世代の代物、実際の戦闘では使い物にならず、兵士も栄養失調や士気の低下が著しいとされている。そして、現在取りざたされている沖縄米軍基地の一番の存在理由として挙げられる北朝鮮有事について次のように述べられている。

(北朝鮮の)核兵器に対しては海兵隊は無力であり、通常兵器での有事の際には 「韓国軍と駐留米軍で防御可能」という。即戦力として投入できる沖縄駐留海兵隊員は約二千人とされ、現実的には「本格的な戦闘は困難。もっぱら韓国や日本、中国などに住む米国人救出部隊となる」といわれる。
北朝鮮に対する「牽制効果」としての海兵隊についても、「牽制効果なら、海兵隊がいなくても日本にいる米陸海空軍の兵力だけで十分」という意見は米国防総省内にもある。

コラムのあとがき、東京新聞記者によるデスクメモが印象に残った。

北朝鮮はミサイルや核を開発し、危機感をあおって食料などの見返りを得てきた。旧態依然とした瀬戸際戦術だが、米国は北東アジア安定のためと称して日韓に長期駐留し、中国は不透明な軍事力増強を続けている。ニワトリと卵の関係ではないが、本当は誰がこの地域を不安定にしているのだろうか。

本日の東京新聞夕刊に、朝刊の疑問に答えるようなコラムが掲載されていた。
名古屋大学特任教授で、外務省の「朝鮮議事録」に関する文書公開に携わった春名幹男氏は次のように述べる。

この(昨秋来の)日米協議で、米側は朝鮮半島有事の際の対応に関して、あらためて佐藤首相の「公約」(朝鮮半島有事の際、在日米軍は事前協議無しに軍事行動 を起こすことを日本政府が当時同意していたという事実)の再確認を求めたようだ。これについて、日本側(鳩山民主党政権)は事前協議に対して「迅速かつ適切に」対応するとの新しい方針示したというのだ。
(中略)また、岡田克也外相自身も米国の「核抑止力」を肯定し、核兵器の存否を「肯定も否定もしない」米政府への支持を表明、米側を安心させた。
密約の相対的重要性は時代とともに変化する。今後は朝鮮有事への対応に関する政策調整が日米の課題となる。

『ソラニン』

夜9時過ぎに、子ども二人をお風呂に入れてララガーデンで、宮崎あおい・高良健吾主演『ソラニン』(2010 アスミック・エース)を観た。
「大人」になりきれない20代半ばの若者たちの青春映画である。前半は、地道な仕事に縛られるストレスなどの主人公たちのエピソードを時間を掛けて丁寧に描かれているので感情移入がしやすい。また、主演の宮崎さんの笑顔がかわいく、演技も良かった。

しかし、クライマックスの演奏シーンがなんだか中途半端に終わってしまい、印象の薄い作品になっているのが残念だ。