大谷晃一『大阪学』(経営書院 1994)を読む。
現在の大阪を象徴する不法駐車や信号無視、吉本興業やダイエー、きつねうどんなどの合理的でせわしいながらも人間臭さののこるものを取り上げ、それらが大阪が歴史的に育んできた文化だと立証する。
楠木正成や信長、秀吉といった政治家や、井原西鶴や上田秋成、それに続く宇野浩二や武田麟太郎などの文学者たちの生き様を、筆者は「大阪」を切り口に丁寧に語る。それぞれ活躍した時代もフィールドも違うが、彼らには共通して、合理主義的な精神と幕府や公家、東京に対する反権威的なものの見かた、そして、あくまでも実践的な判断に基づく行動力があると定義づける。合理的に物事を進めようとする結果の不法駐車や、アンチ東京をテーゼとしてきた吉本興業、現場から商法を展開してきたダイエーなどは、大阪の歴史的な文化が現在においても健在であることの証左である。
『大阪学』
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