日別アーカイブ: 2007年8月11日

『今日、ホームレスになった:13のサラリーマン転落人生』

夏の14冊目
増田明利『今日、ホームレスになった:13のサラリーマン転落人生』(新風舎 2006)を読む。
バブル崩壊後、10年にも及んだ不景気、またそれに伴う就職難、苛烈なリストラ、公共投資削減、金融緩和といった煽りを受けたサラリーマンの転落人生を追う。平均以上の収入を得て、家族を養っていたサラリーマンが一転ホームレスになってしまったのは、決して彼らが社会人としての欠陥を持っていたとか、重大な過ちを犯したからではない。倒産、リストラといった不運に加え、早期退職や独立開業などの些細なタイミングミスが重なると、現在の日本ではすぐに路上生活行きになってしまうのである。

今回のケースは全て男性であったが、男性にとって失業は単に収入を失うだけでなく、人間性そのものを否定されるということである。失業のショックで再就職もうまく行かず、また再就職してもこれまで築いてきた自尊心が傷つけられ、家庭生活でも自信を失い、やがては自棄的な生活へと落ち込んでいく。いかに仕事というものが人間の本質に結びついているか、色々と考えることも多かった。
著者はあとがきで次のように述べる。政府や行政、企業経営者の批判までは至らないが、ホームレス問題は対岸の火事ではなく、私たち自身の経済問題であるとの認識を示す。

ホームレスの人たちを見て「自由で気ままな生活はうらやましいよ」とか「義務も責任もないのだから気楽でいいじゃないか」などと言う人がいるが、それは自らが切迫した状況に置かれたことのない者の発言で、ホームレスは常に生命の危険と隣り合わせでぎりぎり生きているのだ。今回、多数のホームレスに話しを聞いたが、彼らの来歴は決して特別ではなかった。今現在の彼らは汚れて悪臭を放ち、みすぼらしく生気のない顔をしているが、現在ではなく過去を見れば、私たちと彼らはまったく同じところにいたのが分かる。世間一般の人びとはホームレスに対して「あの人たちはまともな社会生活のできない欠陥人間なんだ」と異端視し、「ホームレスのような人間と自分は違う」と思いがちであるがそうではないのだ。

『デジタル書斎の知的活用術』

夏の13冊目
杉山知之『デジタル書斎の知的活用術』(岩波アクティブ新書 2003)を読む。
デジタルハリウッドというCGやDTP、プログラミングの専門学校を経営する著者が、忙しい時間をやりくりするためのメールコミュニケーションやスケジュール管理、また映像や音楽、テレビ番組を全てデジタルで処理し活用するノウハウを紹介する。ノートパソコンのバッテリー管理やデータのバックアップなど、著者自身が実際に試行錯誤を経て日々行なっているデジタル活用術なので、大変分かりやすい。
「デジタル」というと人間の感覚を超えた漠然としたものに感じがちであるが、著者はCPU内蔵のレゴロボットを実際に動かしてプログラミングの難しさを実感したり、旧型の機械式ポラロイドカメラをいじることで、アナログな感覚を有する人間とデジタル世界のバランスを取ることが大切だと述べる。

詳細は杉山氏のブログを参照して下さい  sugiyama_style