野沢尚『破線のマリス』(講談社1997)を読む。
テレビのニュース番組の制作現場を舞台にした作品である。作者野沢氏はテレビ番組を数多く手がけており、小説ではあるが、ニュース番組の映像が、いかに一介の編集者の意向で主観的に作られるものであるかをつくづく実感した。映像を切り貼りし、音楽とスーパーの組み合わせ次第でいくらでもニュース映像をつくる事が出来るのだ。オウム真理教報道以降特に顕著だが、最近の北朝鮮報道など視聴者の関心や恐怖をいたずらに喚起するニュース番組の過当競争は、ニュース素材を伝えることよりも、他局よりもきわどいニュース映像を作ることに注力がいってしまう。これはもう止められない流れであり、正常な判断をするためには、テレビを消すしかないであろう。
『破線のマリス』
コメントを残す