産經新聞『じゅく~る』取材班編『学校って、なんだろう』(新潮文庫 2002)を読んだ。
近年問題化している不登校や学力低下などは生徒個別の問題だけでなく、学校総体としてのレーゾンデートル(存在理由)が根底から揺らいでいるという現状認識を示した上で、学校の「スリム化」こそが根本的な解決策であると述べる。しかし、競争原理導入による学校の多様化、学校に対する保護者の責任の自覚の植え付けという保守的な立場からの意見だけでなく、「教育困難校」やフリースクール、阪神大震災後の学校状況など紹介しながら、学校現場の問題点を丁寧に取材している。学校現場に属しているものにとって、マスコミの教育提案というものはピント外れなものが多いが、取材に時間をかけ、様々な立場の人のコメントがあり、納得できる点が多かった。取材班は学校改革に向けた提言として以下の点を指摘する。
- 学校、とりわけ義務教育段階の学校は、人間として、社会の一員として生きるために必要な、最低限度の知識や社会・集団におけるルールを与える場である。その認識の上に立ち、スリム化を進めるべきである。
- しかし、「ニーズ・価値観・生き方の多様化」も踏まえて、学校における教育方法の多様化、児童・生徒、父母の学校選択の自由化を進め、とりわけ高校の個性化・多様化を一層進めるべきであろう。
- 学校は、時代を担う子どもたちを育てる場である。今以上に変化の激しい時代、不透明な時代を生きるであろう子どもたちが、希望を持って生き抜くことができるように育むことも不可欠である。
- 学校は、地域・社会の貴重な財産である。失われつつある地域社会が再生するための拠点としても、学校は大きな可能性を持っている。
- 子どもの教育に最終的に責任を持つのは親である。だからこそ、学校は親や地域に開放されるべきだし、教師自身にも意識改革が求められる。