小沢隆『武道の心理学入門:武道教育と無意識の世界』(BABジャパン 2006)をパラパラと読む。
大道塾から分離し、1999年の設立された空手道禅道会の代表を務める著者が、武道を通じた心のバランスや身体感覚について語る。
禅道会自体は長野県飯田市という片田舎にありながら、地元に根ざして地道に武道教育を実践している素晴らしい団体だと思っている。
しかし、この本はそうした武道論とも教育論とも異なる、独特なフロイトの解釈や身体論が展開されており、2、3ページで読む気が無くなってしまった。果たして全部読んで理解できる人はいるのであろうか。
「読書」カテゴリーアーカイブ
『ゲゲゲの女房』
武良布枝『ゲゲゲの女房』(実業之日本社 2008)を読む。
『ゲゲゲの鬼太郎』で知られる漫画家水木しげる氏を支えた、糟糠の妻である武良布枝さんの80年近い過去半生が丁寧に綴られている。
夫水木氏の仕事ぶりや家族の成長を通して、漫画だけでなくテレビアニメの初期の様子や高度経済成長期の庶民の暮らしの変化が伺われる。また水木氏自身のパプアニューギニアでの戦争体験や、戦後の混乱もぶりもきちんと描かれている。
あとがきの中の次の言葉が印象的であった。
なんだかいまは、「家庭環境」、「結婚」、「就職」など、人生の入り口でどれだけ幸運をつかむかで、その後のすべてが決まってしまうかのように思い込んでしまう人が多いと聞きます。
人生の入り口での状態は、といえば、水木も私も、お世辞にも、幸運だっとはいえないでしょう。でも、「いろいろなことがあったけれど、幸せだ」と素直にいえるのは、「水木が自分自身を信じ続け、私も水木を信じ続けてきた」からだと思います。自分が選んだ道をひたむきに生きていけば、「来るべきときが必ず来る」とふたりとも信じていたのです。
『仕事とセックスのあいだ』
玄田有史・斎藤珠里『仕事とセックスのあいだ』(朝日新書 2006)を読む。
テーマはずばり「セックスレス」である。一頁に何度もセックスやセックスレスという単語が並ぶ。しかし、スポーツ新聞や「2チャンネル」のような好事家的な内容とは異なり、社会調査データの分析から、社会問題としてセックスレスを位置づける。労働経済学を専門とする玄田氏が労働時間や職場の雰囲気、労働観といった側面からセックスレスにアプローチを試みるのに対し、アエラ編集部を経てパリ第1大学博士課程でセックスとメディアの研究をしている斎藤さんは女性性や男女交際、「負け犬(酒井順子)」といった側面からセックスレスの実態に迫る。
玄田氏の分析によると、労働時間が増えれば増えるほど、雇用が不安定になればなるほどセックスの回数は激減する。また、職場の雰囲気や労働意欲が低いほどセックスレスになる傾向が強くなる。
むすびの中で、玄田氏は次のように述べる。参考にしたいと思ったので、少し長いが引用してみたい。
今回、ショックだった一つはそこです。これまでの働き方が、個人の内面に深く関わっているんだと突きつけられた感じがして。仕事上のストレスが、個人の気持ちやパートナーとの関係にひそかに、そして確実に影響している。いい悪いを超えて、素直に悲しいと思った。
(中略)仕事も大事、夫婦や恋人との関係も大事。だけど、もう一つ本当に大事なのは「遊び」です。仕事とパートナーとのセックスがあまりにも直接的に結びついているのは、やっぱり悲しい。仕事とか、子育てとかいう括りだけじゃなく、もっと広い意味での遊びを一人ひとりが生活の中で持たないと。男も女も、もっと遊ばなくちゃいけない。職場の中の遊びとして、斎藤さんが言うように「色気」というのも必要かもしれない。
(中略)遊びというのは、心を自由にして、敢えて無駄を認めてみるとか、理屈を超えた何かを自分からやってみることじゃないかと思うんです。
(中略)でも、どんな世界でもね、いい仕事をする人って、結局は遊びがある人だと思うんです。それはきっとフランスも日本も一緒でしょう。原点に戻れば、同じかなって。生活が困窮してすべてを売り払ってしまっても、大事にしている一着の着物だけは手放さないという人のなかには、独特の遊びの感覚があるように思う。いつの時代も、どんな国でも、そんな人はいる。生きるためと考え過ぎたら窮屈になっちゃう。つまらない理屈を超えたのが「遊び」なんです。
『英語で手帳を書こう』
神林サリー『Easy&Fun! 英語で手帳を書こう』(永岡書店 2012)を読む。
仕事帰りに、何年か振りに与野にある書楽へ赴き、珍しく新刊本を購入した。
先日読んだ、『究極の手帳術』に紹介されていた本である。本屋では手帳のコーナーではなく、英会話のコーナーに置かれていた。
英語で日記や手帳を付けることで英語力アップを目指す類書がいくつかあったが、一番お洒落であった本書を手にした。
スケジュール管理というよりも、毎日の予定やメモ、心のつぶやきを英語で書くことで、英語を使う習慣を付けることに重きが置かれている。
手帳の記入例に加え、手帳でよく使う単語や言い回し、略語などが紹介されている。女性向けに編集されており、恋愛や美容に関する表現が多かったが、参考になることが多かった。
まだ、新しい手帳を購入していないが、少しずつ手帳やToDoメモなどを英語化することで、自然と英語力(単語力?)を付けていきたい。
『田辺聖子の今昔物語』
田辺聖子『田辺聖子の今昔物語』(角川文庫 1993)を読む。
『今昔物語』の内の、本朝世俗篇から30弱の作品が収録されている。いずれも正確な現代語訳ではなく、「田辺流解釈」であり、貴族や法師と言えども煩悩やら現世欲やらは抑えることができず、「やっぱり人間だもの」といったトーンでまとめられている。
神が人を裁くのではなく、縁が人の人生を操るといった日本の文化に触れたような気がした。
あとがきの言葉が印象に残ったので、書き留めておきたい。
『今昔物語』は人々に仏法を説くための説話集であったともいわれます。善因善果、悪因悪果の因果応報、さらには生者必滅、会者定離の仏教の真理について……。その真理が長大な一篇の物語に凝ると『源氏物語』となり、小さく砕けば『今昔物語』となるのではないでしょうか。尤も、『源氏物語』は説話集ではありませんが、その美しい玉を砕くと、飛び散る一片一片が、『今昔物語』の説話になるのです。

