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『国家の謀略』『知の武装』

佐藤優『国家の謀略』(小学舘 2007)、佐藤優×手嶋龍一『知の武装:救国インテリジェンス』(新潮社 2013)の2冊をパラパラと読む。
どちらも佐藤優氏の述べる「インテリジェンス」をキーワードに、米露欧を中心とした国際政治の駆け引きの舞台裏の暴露話が中心となっている。なんだかリアル版『ゴルゴ13』のような内容で興味が湧かなかった。
ただ一点、佐藤氏が外交やインテリジュンスの基礎知識を身につける基本書として、高校の政治経済の参考書を挙げていたのは興味深かった。

以下、佐藤氏オススメの参考書
早稲田大学政治経済学部教授松本保美編著『理解しやすい政治・経済 新課程版』(文英堂 2014)

『河上肇評論集』

杉原四郎編『河上肇評論集』(岩波文庫 1987)を読み始めた。
河上肇氏は1902年生まれの経済学者である。『資本論』の翻訳や、ベストセラーとなった『貧乏物語』の著者としても有名で、読売新聞社を経て京都大学の教授となってからは、マルクス主義の立場を漸次はっきりとさせていき、『改造』や『労働農民新聞』などで論陣を張るオピニオンリーダーとなった人物である。しかし、50歳を前に大学を辞して後、共産党に入党し、地下運動に入り、4年間獄中で暮らした華々しい経歴の持ち主である。
どの文章も、今現在の社会、政治、経済、労働問題の核心をついており、著者の視点の鋭さに驚きを隠せない。
その中でも一番印象に残った章をを引用してみたい。論語に代表的な漢文の訓読調の繰り返しのリズムが耳に心地よい。

 経済社会の理想は経済社会それ自身の滅亡にあること、以上述ぶるが如し。しからば敢て問う、吾人は如何にしてこの理想を実現するを得べき乎。曰く他なし。ただ労働を遊戯化するにあるのみ。然りただ労働を遊戯化するにあるのみなれど、この事言うは易くして行うは実に難し。今ま吾人はこれが実現の手段を索めて大要二種の方策を得たり。一を労働時間の短縮となし、ニを労働の種類の選択となす。請う、まず労働時間の短縮について論ぜん。

 思うに、如何なる種類の刺激といえども、もしその刺激にして或る程度以上に強絡んか、吾人は必ず一定の苦痛を感ずるに至ルものなり。例えば音楽を聴くに、その音声、耳を距ること甚だ遠ければ、吾人はこれに対して固より何らの快感を覚えずといえども、さらばとて耳のすぐ傍にて奏せらるるにては、如何に美妙の音楽といえども、われらはその騒々しさに耐え得ざるべし。演劇を見るにも、近からず遠からずという或る一点あるものにて、或る程度を越して近寄りては、美しく見えし俳優の顔にも、白粉の汗に剥げたるを見るに至るべし。寒き時、外より帰り来りて暖炉にあたらば、最初の中は甚だ快けれど、度を過ぐれば、頭痛を感ずるに至るべく、暑き時、涼風の吹くは誰も心地よしと賞むれど、それにもまた程度あることにて、温度或る程度以上に降らば、また寒しというに至らん。如何に古来稀なる名画なりとも、見ること久しければついに飽くの時あるべく、終日坐してこれに対せよといわるれば何人も苦痛を感ぜざるを得ざらん。またたとえばここに酒ありとせんに一杯また一杯、杯を重ぬるに従うて暫の間は興次第に加わるといえども、それも度を越さば、酒の味次第に減じて全く飽満の極に達し、それより以上酒を勧めらるるはかえって苦痛を不快とするに至るべし。

 これを要するに、距離の関係よりいうも、時間の関係よりいうも、将た分量の関係よりいうも、一定の刺激にして或る以上に強からんか、吾人は必ず一定の苦痛を感ずるに至るものなり。音楽を聴き、演劇を観る、皆な人の楽しとする所なり。寒き時、暖炉にあたり、暑き時、涼風に吹カルル、皆な人の快しとする所なり。名画を賞し美酒を味わう、また人の欲する所なり。しかもこれらのこと皆な一定の程度ありて、これが刺激その度を超えて強絡んか、吾人はついに一定の苦痛不快を感ずるを免れざるなり。しからば、かの長時間の労働に服する余儀なくせられつつある多数の労働者が、常にその労働の負担に苦しむ、何ぞ怪しむに足らん。

 人生の苦痛は過度の労働を強いらるるより生ず。もしその程度を適度に軽減せんか、今日の苦役、半ばは化して遊戯とならん。知るべし、労働を遊戯化するの一策は、その時間の短縮にあることを。

 人生一日も水なかるべからず、しかも水の供給にして過度ならんか、人畜家財を流出してその害をいうべからず。人間また一日も静坐することあたわず。必ず手を挙げ足を投ずることをなす。ただその一挙手一投足に止まらざるが故に、人生に苦痛あり。

『レディになるための魅力講座』

山谷えり子『レディになるための魅力講座』(日本実業出版社 1986)を読む。
主に20代の女性を対象としており、男性の気を引くための振る舞いや会話、化粧方法などの恋愛ハウツー本である。80年代後半当時、揶揄されることの多かったマニュアル本の類である。女性という生き物は、自分を売るためにここまで細かい部分に気を使うのかと、およそ男性には真似できない芸当であると勉強になった。
著者の山谷さんは、現在、自民党選出の国会議員であり、北朝鮮による拉致問題等に関する特別委員会で委員長を務める。はたして、著者の勧める”男性ナンパ術”が国会のセンセイを相手にいかされているのだろうか。

『論文・レポートの文章作法』

古郡廷治『論文・レポートの文章作法』(有斐閣新書 1992)を読む。
小論文指導を担当することになったので、勉強のつもりで例文を一つひとつ精読していった。
経済学や情報技術に関する論文の文章を取り上げ、なぜ伝わらないのか、読みにくいのかと分析を加えた上で、正しい文章に添削するという形で論が進められる。
特に「段落を書く技術」が参考になったので、ためになった部分を引用しておきたい。特に、一つの段落内に色々な内容を詰め込もうとせずに、意識的に主題を絞りこみ、他の段落が欠落しても通じるような独立性の高い内容にするという点が印象に残った。

 よい段落を書くためには、他の段落に頼らずに意味のわかる段落、文章の要素として独立性の高い段落を書くことが大事です。それには、主題の明確な段落を書くことと、結束性(つながり)の強い段落を書く必要があります。

 段落を書くときには主題を明示するように心がけるべきです。これは文の主語を明示することと同じ意味を持ちます。こうすると、文章の要素としての段落に独立性が生まれます。主題を明示しない場合には、主語を明示しない文の場合と同じく、主題を簡単に推理できるような構造にすることです。

『体験ルポ 世界の高齢者福祉』

山井和則『体験ルポ 世界の高齢者福祉』(岩波新書 1991)をパラパラと読む。
これも社事大のレポートを書く際に購入した本で、本棚整理の一環で手に取ってみた。
イギリス、アメリカ、スウェーデン、デンマーク、シンガポールの高齢者施設での実習体験がまとめられている。
松下政経塾での研究という性格上、総じて、他国の充実した福祉に比べ、日本の政治や行政、国民意識の貧困さを指摘するという論調になっている。一方で、著者は、家族が親身になって面倒をみる暖かい介護が主流の日本に比べ、高齢者自身にも自立を求め、行政や民間の福祉サービスに全面的に移行していこうとするヨーロッパのやり方にも疑問を呈している。
最後に著者は次のように述べる。

 これからは「日本の伝統的な家族扶助を壊さないためにも、公的福祉の充実が必要」と考えるべきではないか。(中略)
 お年寄りに優しい気持ちだけでは、高齢化問題は解決できない。その敬老の心を形にした「制度」が必要だ。「寝たきり大国」は、ほかでもない「家族愛・忍耐の美学」に頼る「根性」福祉の限界を如実に語っている。
 (中略)ヨーロッパの福祉制度を参考にしながら、日本人の家族愛と敬老の心を「制度」という形のあるものにすることができれば、私は日本が世界一お年寄りが暮らしやすい社会になると信じている。