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『超高速! 参勤交代』

土橋彰宏『超高速! 参勤交代』(講談社文庫 2015)を読む。
久しぶりに小説を心から楽しむことができた。
湯長谷藩(福島県いわき市)の藩主が江戸城の老中の策略により、たった5日間で家臣を従えつつ参勤交代を命じられることから話が始まる。途中剣や槍、弓の入り混じる戦闘場面あり、忍者活劇あり、ちょっとしたお色気もある、映画仕立ての作品であった。

5日間の参勤交代のエピソードはフィクションであるが、武芸に長じた湯長谷藩の4代藩主・政醇が吉宗にお目見えした史実に沿った内容となっている。幕藩体制という将軍と大名の封建的主従関係の中で、将軍に対する臣従を確認する役割を果たした参勤交代の持つ意味の重さは伝わってくる。

一応歴史小説であるが、平易な文体で書かれており、中学生でも数時間で読み終える作品となっている。また、東日本大震災後に書かれた作品で、原発を地方に押しつけてきた中央政府への疑問や郷土の土を汚した原発事故に対する批判も盛り込まれており、エンターテイメントの作品に込められた社会的な筆者の主張を読み解いていくのも面白い。

『SAQトレーニング:スポーツ』

日本SAQ協会監修『SAQトレーニング:スポーツ・パフォーマンスが劇的に向上する』(ベースボール・マガジン社 2007)を読む。
SAQとは基礎的なトレーニングの要素をスピード(Speed)、アジリティ(Agility)、クイックネス(Quickness)の3つに分類したそれぞれの頭文字である。

スピードとは、トップスピードを指し、陸上競技の100mのように直接的な動きの場面で発揮される。アジリティとは、敏捷性のことで、サッカーやバスケットボール、テニスなど、素早い方向転換や切り返し、左右や後方への早い移動を指す。クイックネスとは、素早さのことで、静止状態からの速い反応と動作を指し、野球の盗塁のように最初の数歩をいかに無駄なく、スムーズに加速をするかという動きのことである。

それぞれの項目について連続写真とDVD映像で分かりやすく説明されている。競技の前のアップもただ息を上げれば良いというものではなく、正しい目的とやり方があるということがきちんと理解できた。他にダイナミックストレッチや体幹トレーニングも紹介されており、運動競技の指導者の必読書と言っても良いだろう。

『幕末』

司馬遼太郎『幕末』(文春文庫 1977)を少しだけ読む。
晩年元年三月三日朝、江戸城桜田門外で春の雪を血で染めた大老井伊直弼襲撃など、幕末に起こった12の暗殺事件の顛末を描く連作小説である。
第1話の「桜田門外の変」は、薩摩藩士として唯一襲撃に参加した有村次左衛門を中心に描く。治左衛門の心には薩摩藩を代表するという心意気が死ぬ直前まで消えることがなかった。

最後に司馬氏は次のように語る。
テロを肯定することはできない。しかし、悪政を倒す革命の始まりだと捉えれば、その意義はその後の歴史の中で丁寧に検証するしかない。司馬氏は「明治維新を肯定するとすれば」と限定を付けた上で、桜田門外の意義を説く。

 この桜田門外から幕府の崩壊が始まるのだが、その史的意義を説くのが本篇の目的ではない。ただ、暗殺という政治行為は、史上前進的な結局を生んだことは絶無といっていいが、この変だけは、例外といえる。明治維新を肯定するとすれば、それはこの桜田門外からはじまる。斬られた井伊直弼は、その最も重大な歴史的役割を、斬られたことによって果たした。三百年幕軍の最精鋭といわれた彦根藩は、十数人の浪士に斬り込まれて惨敗したことによって、倒幕の推進者を躍動させ、そのエネルギーが維新の招来を早めたといえる。この事件のどの死者にも、歴史は犬死をさせていない。

『日本住宅史図集』

住宅史研究会編『日本住宅史図集』(理工図書 1970)を読む。
大学の建築学科や家政科の講義の参考文献として編集されたもので、縄文時代の竪穴式住居から1960年代の団地や都市計画まで、2000年間の日本の住宅の展開図や構造の絵や写真が並ぶ資料集となっている。一概には比べられるものではないが、1950、60年代の鉄筋コンクリートの団地よりも、古代の茅葺の家や中世の茶室の方が遥かに人間らしいと感じる。
最近は日本の住宅事情を評する「ウサギ小屋」という言葉もあまり聞かれなくなったが、熱帯夜が続く今日この頃、果たして都心のワンルームマンションと古墳時代の住宅と、どちらが寝苦しいのだろうか。

昼間の疲れが出たためか、何だかよく分からない文章になってしまった。

『アジアの環境問題と日本の責任』

宮本憲一編『アジアの環境問題と日本の責任』(かもがわ出版 1992)を読む。
日本だけでなく、韓国、マレーシア、台湾のレポートを中心に、「公害輸出」とも呼ばれる日本企業の勝手な経営戦略やアジア各国の環境政策の具体的な問題点が報告されている。特にマレーシア・ボルネオ島のサバ州とサラワク州における木材伐採は目を覆うばかりである。マレーシア政府と日本企業が一体となって、再生不可能なほどに熱帯雨林の80%が伐採され、森の中で暮らすペナン族へ迫害を強めていく様子は、映画「アバター」の世界そのままである。

近年はマレーシアからの木材輸入は減少しているが、日本は国土の67%が森林に覆われているので、まずは日本国内で官民一体となって木材の自給自足のあり方を検討するべきである。編者の宮本氏も「持続可能な発展」を目指す日本型環境モデルを提唱すべきだと述べる。