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『沈黙』

第2回谷崎潤一郎賞受賞作、遠藤周作『沈黙』(新潮文庫 1981)を数ページだけ読む。
1966年に刊行された本である。本棚の整理で、奥の方で埃をかぶった本を引っ張り出してみた。
文芸評論家佐伯彰一氏の解説に、ばっちりな紹介があったので内容を引用し、読んだつもりにしておきたい。

 もっとも、ここにおけるドラマの仕組みは、むしろ簡単率直なものだ。切支丹禁制のあくまできびしい鎖国日本に、三人のポルトガルの若い司祭が、潜入をくわだてる。島原の乱が鎮圧されてから間もない頃のことで、一きわ取締りの目もきびしく、何とか無事上陸を果し、日本人信徒との連絡をつけたものの、もちろん、間もなく捕われて、過酷な拷問を加えられ、ついに背教の止むなきにいたる。そもそもの当初から、失敗、敗北はほぼ明白な、いわば絶望的な挑戦のくわだてであり、果して事態は予測された通りに進行する。思いもうけぬ不意打ちは、まったく起らないというに近いのだから、ドラマとしては、わき道なしの直線的展開が一きわ目立つ。これほど一本道の、見通しのよすぎるほどの筋立てで、われわれ読者を一気に作中に誘いこむとはと、改めて小説家遠藤周作の力量のほどに感心させられる(後略)

『神はテーブルクロス』

春日部イオンのスタバで、須藤元気『神はテーブルクロス』(幻冬舎 2007)を読む。
エッセーというかポエムというか、よく分からない個人的な思いが綴られる。しかし、スタバでコーヒー片手にポエムを読むというのは心地よいものだ。
その中で、私が強く共感した章を引用しておきたい。須藤氏が述べるように、私も本は借りない、折り目をつけて汚く読む、記録するということを肝に銘じている。

 とても効率の良い投資活動は読書だと思う。
 まず、著者が何年もかけて得た方法や物語を1〜2時間で吸収できる。また、自分のボキャブラリーの数が増す。他にも、さまざまなシチュエーションに置かれた人間の心理や傾向を学ぶことで、人生の視野を広くすることができる。(中略)これらのメリットに気がついてからはどんなにお金がなくても本を購入することだけは惜しまなかった。
 読書にはポイントがあるのでいくつか書いてみたい。

「本は自分で買うこと」
 投資する。自らお金を出すことにより、何かしら得ようという気持ちが強くなる。それに、借りた本だと感銘を受けたセンテンスに線を引いたり折り目をつけたりすることができない。本とは本来、汚すものだと思っている。僕の本は良いものであればあるほどボロボロになっていくので、良い本は本棚を見るとすぐにわかる。

「読み終わったら書き出す」
 ほとんどの人が読み終わった本はそのままにしておく傾向が強い。すると、大抵は三日もすると内容の90%以上は忘れてしまうらしい。読んでいるときに良いセンテンスがあれば折り目をつけておく。それを、気が向いたときにでも書き出すと吸収の仕方がまるで違う。自分の夢もちょっとしたことでたびたび忘れるので書き出すことをオススメする。

「明確な目的意識を持って読む」
 読む本から何を学びたいかというテーマを持つ。何気なく読むのと目的意識を持って読むのは内容の吸収の仕方が違う。夢を持って行動している人とそうでない人との差と同じであり、もしくは学校や職場に好きな人がいるかいないかでのモチベーションの高さの違いと同じである。

「同じジャンルの本を違う著者で何冊か読む」
 専門的に学びたいものがあれば同じ著者の本を何冊も読むのではなく、違う著者の本を5冊ほどランダムに読むほうがいい。書いてあることはそれぞれ違うのですべての鵜呑みにせずにいろんな角度から読める。そして自分なりに咀嚼してオリジナルの哲学や手法を構想することができるのである。(後略)

 

『世界の食糧・農業Q&A』

ベルトラン・デルプーシュ『世界の食糧・農業Q&A』(農文協 1990)を読む。
30年前の本なので、ソ連の「コルホーズ(農業の共同化)」や「第三世界」、「EC」といった懐かしい単語が登場する。特に農業における南北問題について、先進国から開発途上国へ農産物が輸出される現状について、アグリビジネスや食糧援助、累積債務問題などかなり硬派な視点から論じられている。地球規模での温暖化防止条約やバイオ燃料が登場する前であり、国際農業情勢も現在とは異なる点もある。しかし、オランダの農業輸出や劣性遺伝が生じる交配種ビジネスなど現在に繋がる内容も多く勉強になった。

『森林とみんなの暮らし』

林野庁監修・日本林業技術協会編『森林とみんなの暮らし』(日本林業技術協会 1985)を読む。
中学生向けの平易な文章と森林のきれいな写真で構成されている。写真集を眺めるような気持ちで読んだ。
世界の森林の減少や日本の森林やその働き、暮らしと森林の関わりなど、官公庁が出すパンフレットのようなありきたりなものである。ソ連や西ドイツといった懐かしい国名も登場する。不景気や少子高齢化、深刻な過疎化とは無縁のバブル直前の頃に発行された本で、植林の後継者不足や中国の環境破壊といった今日的な問題点は描かれない。

『東京今昔散歩』

原島広至『東京今昔散歩:彩色絵はがき・古地図から眺める』(中経出版 2008)を読む。
明治時代に流行った手彩色古写真の東京の風景と同じ構図の現在の風景を見比べるという内容である。江戸城周辺、亀戸天神、墨堤、浅草、隅田川、上野、神田川界隈、九段坂、日本橋界隈、銀座、丸の内、霞が関、赤坂・四谷、芝といった東京都心の風景の移り変わりが分かる。日本銀行本店や東京駅など、建築家の辰野金吾氏が設計した建物が近代化を突っ走る明治の風景を象徴する。