地理」カテゴリーアーカイブ

「上下1万円きる軽やかスーツ」

本日の東京新聞朝刊に、洋服の青山で上下1万円を切るスーツが発売されたとの記事が掲載されていた。私も早速ホームページを見て品質の良さにびっくりしたところだ。

円安が続く中で、どうして大手企業でこれほど安いスーツが販売できるのかと、不思議に思った。そこで、更にネットで調べてみたところ、青山商事ではこの数年人件費が上がってきた上海の工場から、インドネシアの中部ジャワ州に生産シフトを移しているとのこと。

中国の一人当たりのGDPは約14,096ドル(2021年)、インドネシアの一人当りGDPは4,349ドルとなっている。単純に考えると、ドルベースで同じ給料を支払うならば、インドネシア工場の労働者の賃金は上海に比べて3分の1となる。

また、ここからは憶測だが、記事にあるゼロプレッシャースーツは伸縮性の高い素材を利用しているとのこと。つまり綿ではなく石油や天然ガスから作られるポリエステルであろうと推測できる。インドネシアやマレーシアは天然ガスに恵まれ、両国とも生産量で世界で10数番目となっている。

インドネシアでは天然ガスをそのまま輸出するよりも、国内の重化学工業を発展させ、天然ガスを工業製品に加工して輸出する方向を目指している。地理用語で言うならば、一次産品から二次産品に加工して輸出することで、国内経済を発展させようということである。国連貿易開発会議(UNCTAD)の調べでは、発展途上国の3分の2で1次産品の輸出の割合が6割を超える「依存国」となっている。

「穀物船第1便立ち往生」

本日の東京新聞朝刊に、ウクライナ産のとうもろこしを積んだ貨物船が、品質を理由にレバノンの業者に買取を拒否され、海上を彷徨っているとの記事が掲載されていた。

注目してほしいのが、貨物船がシエラレオネ「船籍」ということだ。実は船にも人の国籍と同じように「船籍」というものがある。しかし、シエラレオネは西アフリカに位置し、ウクライナやレバノンから遠く離れている。

こうした船主が船籍を「便宜」的に外国に置いた船舶を便宜置籍船とよぶ。貨物船やタンカーなど巨大な船になると登録料や税金が大きくなり、登録手続きや安全に関する規制などが厳しくなる。こうした負担を逃れるために、世界中の船舶業者が書類上だけ他国に登録するのが通例となっている。一方、置籍船の多い国にしてみれば、貴重な外貨収入源となり、お互いにウィン・ウィンの関係と言える。

船籍のランキングは以下の通りである。日本も10位にランクしているが、実は日本の商船の6割がパナマ船籍となっている。シエラレオネ船籍は第53位となっている。乗組員の大半がウクライナ語もアラビア語も理解しておらず、レバノンの商社と船舶業者との連絡が上手くいかなかった点が背景として指摘されるのであろう。

一般社団法人日本船主協会のホームページ資料より

一般社団法人日本船主協会のホームページ資料より

Twitter投稿より。
マクドナルドの店舗数は、2022年7月現在、国内2,957を数える。
人の歩く速度が平均4km/hと言われているので、半径2kmというと徒歩30分の距離である。
地理探求の内容となるが、食事や日常品の購入などの「最寄品商圏(一次商圏)」とに

「日本にミャンマー軍人『留学』」

本日の東京新聞朝刊に、昨年のクーデターで実権を握った軍政府の軍人を日本の防衛省が受け入れているとの記事が掲載されていた。

石橋通宏参院議員は「多くの人が虐殺される中でも受け入れるのであれば、いかなる理由か堂々と説明すべきだ」と強調する。防衛省での受け入れの是非をめぐっては、旧統一教会との関係が取り沙汰された岸信夫前防衛相が辞任したので、現防衛大臣が国会で説明すべきことである。

気になったのが、軍事ジャーナリストの前田哲男氏のコメントである。

中国との接近を阻むためにも、国軍とパイプを断ちたくない。人権問題を抱えるミャンマーと日本の関係を認めがたい米国も、中国包囲網形成のために許容している。

現在のミャンマー国軍政府の評価は、中国との関係で考えると途端に難しくなる。軍事政権だから批判するのは簡単である。では、中国政府とずぶずぶの関係になっていた前アウン・サン・スーチー政権はどう総括すべきなのか。

新聞を読んでいる限りの情報で判断すると、私はミャンマー軍政権は100%批判の対象ではないと考えている。日本がミャンマーとの関係を保つという思惑でミャンマー軍人を受け入れるのは必ずしも否定すべき話ではない。というのは、ノーベル平和賞受賞のアウン・サン・スーチー率いる国民民主連盟(NLD)の政権時代があまりに胡散臭いからだ。

ただし、決して現在の軍政権を肯定するわけではない。非道な行為は決して容認できない。では返す刀で前NLD政権はどうだったのか。中国共産党の一帯一路経済圏に加担し、イスラム系少数民族ロヒンギャの迫害では数千人が犠牲になったとも言われている。いずれにせよ少ない情報で白黒つけて判断するのは危険である。

「アフガン タリバン復権1年」

本日の東京新聞朝刊にタリバン政権が復権してから1年が経つアフガニスタンの情勢が伝えられていた。アフガニスタンで支援活動を続けるNPO法人「難民を助ける会」のバセルさんは「アフガニスタンは今、食料をはじめあらゆる必要物資を支援に頼っているが、支援は一時的で持続的ではない。人々に仕事の機会を与えてほしいと訴える。

外務省の統計でみると、アフガニスタンの一人あたりのGNIは530ドルと世界で一番貧しい国であり、2017年で失業率は11.2%となっている。2018年の統計によると、74億ドルの輸入に対し、輸出は9億ドルに過ぎず、内訳はドライフルーツ(35%)、薬草(15%)、果物(11%)、鉱物(11%)、野菜(8%)等となっている。資源に恵まれておらず、また内陸国なので中国や東南アジアで成功した輸出加工区のような工場誘致も難しい。そうした中で、バセルさんが訴える「持続的」な支援はどのようなものがあるのか。

2019年にアフガニスタンで凶弾に倒れた中村哲医師は「緊急のアフガニスタンの問題は、政治や軍事問題ではない。パンと水の問題である」と語る。中村医師は40年以上にわたり、パキスタン・アフガニスタンで安全な水と農業用水の確保に向けた灌漑事業に取り組んできた人物である。

アフガニスタンでは降水量の統計が取られていないが、2000年頃から干ばつが度々発生するようになり、小麦や果物が大きな被害を受けている。中村医師は独学で土木を勉強し、アフガニスタンに用水路の建設を進め、65万人の命を救ったとも言われている。(まさに国葬に値する人物である)現在、国際NGO(NPO)団体ペシャワール会で中村医師の思いを受け継ぎ、アフガニスタンで灌漑水利事業を進めている。

中村医師は2001年、タリバンが世界的に有名なバーミヤンの仏教遺跡などを破壊したときに次のように語っている。

今世界中で仏跡破壊の議論が盛んであるが、我々は非難の合唱に加わらない。アフガニスタンの国情を尊重する。暴に対して暴を以て報いるのは、我々のやり方ではない。
餓死者百万人と言われるこの状態の中で、いま仏跡の議論をする暇はないと思う。少なくともペシャワール会=PMSは、建設的な人道的支援を、忍耐を以て継続する。我々はアフガニスタンを見捨てない。

つまり、政治や民主主義などの能書きを語る前に、安全な水と安心して暮らせる食料の確保こそがアフガニスタンに最も必要な支援であると述べるのだ。20年以上も前の言葉である。
一介の地理教諭であるが、授業の中でこうしたことに思いを寄せるような生徒を育てていきたい。また思いだけでなく、実際の医療や農業、建設現場で力を発揮するような若者を送り出していきたい。