投稿者「heavysnow」のアーカイブ

『地球はふるえる』

根本順吉『地球はふるえる』〈ちくま少年図書館19〉(筑摩書房,1980)を読む。
奥付に記載されていた当時の筑摩書房の代表取締役の布川角左衛門という名前が目を引いた。
著者の根本氏は気象庁で長期予報を担当した予報官である。そのため大気大循環や100年、1000年単位の気候の変化について分かりやすく書かれている。主に1970年後半の話が中心であるが、地球寒冷化を強調していたのが気になった。1970年代から専門家の間では地球の温暖化が問題視されていたので、何か特別な根拠があったのであろうか。

江戸幕府の「江戸」とは「入江の門」という意味で、江戸城を作った頃は、日比谷、浅草、不忍池あたりまで入江が入り込んでいたことに由来する。

江戸は坂が多く、ほこりが巻き上がるところが多かったそうだ。そこから「風が吹けば桶屋が儲かる」という諺が生まれている。風が吹けばほこりが舞い上がって眼病が増える、その結果めくらが多くなる。めくらが多くなるとごぜがふえる。ごぜは三味線をひくから、三味線がたくさん必要になる。三味線は猫の皮を使うから猫がたくさん殺され、そのためネズミが繁殖して風呂屋の桶をかじる。だから桶屋が繁盛するという言われである。

ティグリス・ユーフラテス川は文明発祥の地として有名だが、9世紀頃から小麦が取れなくなり、次に大麦もとれなくなり、荒廃した地帯へとなっていった。その理由は源流のトルコのアナトリア高原は岩塩があり、その岩塩を含んだ塩水が川に流れ込み、その水を灌漑に使うと、水は蒸発し塩分が土壌にたくわえらえることになる。地中に蓄えられた塩分はさらに地下水にしみこんでゆき、地下水の塩分濃度まで高くなっていく。そすいた塩分の蓄積が限度に達したのが9世紀頃だというのが著者の見解である。

春日部駅の改修の様子

本日春日部駅に行ったら、工事が大分進んでいた。
春日部に住んで26年。春日部の変化に自分の生涯を重ねてしまう。
春日部の進化に自分自身の進化を準えたい。

『舗装と下水道の文化』

岡並木『舗装と下水道の文化』(論創社,1985)をパラパラと読む。
タイトルの通り、舗装道路の問題点と世界の下水道の歴史がまとめられている。
著者は交通問題や都市問題を担当されている朝日新聞の編集委員であり、大学の研究者ではないのだが、研究論文なみの内容となっている。パラパラと目を通しただけだが、日本は江戸時代に完璧なまでに下水のリサイクルをしていたので、欧米の真似をして下水道を通したことが果たして正解だったのか。著者は疑問を投げかける。

『貧乏は正しい』

橋本治『貧乏は正しい:17歳のための超絶社会主義讀本』(小学館,1994)を数ページだけ読む。
正直受け付けなかった。17歳向けの体のエッセイ集で、著者の畳み掛けるような文体がどうも慣れない。

『地図のない旅』

五木寛之『地図のない旅』〈五木寛之エッセイ全集 第3巻〉(講談社,1979)をパラパラと読んだ。
一体何十年ぶりに読み返すのか。おそらく高校生以来30数年ぶりであろう。解説の中で、駒尺喜美さんも指摘していたが、1968年のパリでのエッセイの一節が気になった。五木氏は次のように述べる。

世界の学生運動は共通のものを指向して動いている。それは単純化していえば、社会硬化現象に対する否定の行動といえるだろう。
官僚権力組織と、経済機構の固定化、上からの一方交通的な支配体制の強化が見られるすべての国において、その否定の運動は立ち現われるはずだ。いずれソ連国内においても学生のデモが行われるだろう。社会主義社会の中には、より一層の官僚支配体制の強大化が見られるからである。
そういった否定のエネルギーを、「イタリア! イタリア! イタリア!」「フランス! フランス! フランス!」「日本! 日本! 日本!」の合唱にすりかえられぬようにするにはどうすればよいか、などと考えながら深夜のカルチェ・ラタンを歩く。

五木氏は社会が行き詰まると、イタズラな愛国心を全面に出したファシズムがやってくると警告を発しているのである。