丸山工作『筋肉はなぜ動く』(岩波ジュニア新書,2001)を少しだけ読む。
正直、読者のことを想定せず、前著の研究書を平易な言葉で書き直しただけで、中高生が理解できる取っ掛かりがなく、生物は難しいという印象しか与えない。
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『ゲーム脳の恐怖』
森昭雄『ゲーム脳の恐怖』(日本放送出版協会,2002)をパラパラと読む。
著者は刊行当時、脳神経科学を専門とされている日本大学教授である。本書では脳波分析を通してゲームが脳にどのような影響を及ぼすか、分かりやすく説明されている。分析によるとテレビゲームやケータイゲームのプレイ中は、意志や創造、思考、感情を司る脳の前頭葉が反応しないことが判明した。また、長期間ゲームを続けていると、ゲームをしていない時間も前頭葉の働きが悪いことが分かってきた。特に感情に乏しくなり、キレやすくなったりするのが科学的な分析を通して証明されてきたのだ。しかし、一口にゲームといっても身体を動かすダンスゲームや文章を読むロールプレイングゲームでは前頭葉の活動が見られたとのこと。
そして、最後に著者はゲーム脳に対して、「スキンシップ」と「手をとって教えること」が大切だと述べる。
『台湾に生きている「日本」』
片倉佳史『台湾に生きている「日本」』(祥伝社新書,2009)をパラパラと読む。
著者は1969年生まれで早稲田大学教育学部教育学科を卒業されている。卒業後はベネッセコーポレーションに就職され、その後台湾へ移住され、1895年の下関条約から1945年の日本の敗戦まで、日本の統治下にあった台湾を愛し、当時の日本政府が整備したインフラに強い関心を持たれている。旅行ガイド的な内容で、台湾各地に残る日本の建造物や文化財が、北の台北から南の高雄まで網羅的に紹介されている。
50年間の統治時代をいたずらに礼賛することなく、かといって頭ごなしに否定することなく、現在も台湾の生活や文化に息づいているのかという点から評価・解説をしている点は好ましい。
「ブラジリア 〜 荒野に出現!夢の未来都市」
本日TBSで放映された「世界遺産 ブラジリア 〜 荒野に出現!夢の未来都市」は興味深かった。
1960年に建設され、1987年に世界遺産に登録されている。地理の教科書では森林を伐採して、新たに作られた政治都市として有名である。都市人口2000万人を超えるサンパウロ、旧首都で人口600万人を抱えるリオ・デ・ジャネイロに次ぐ、300万人の人口の都市である。無機的な都市だという印象が強かった。
しかし、番組をみると、建築家の粋を凝らした芸術的な建築物に溢れ、集合住宅の目の前に幼稚園や小学校が配置されたエリアがいくつも並ぶ。アパートも遊ぶためのエントランスや、車が通行止めになる日曜日は道路一帯が自転車に開放されているなど、人間的な営みを大事にした都市だということが分かった。
『イスラム国の正体』
国枝昌樹『イスラム国の正体』(朝日新書,2015)を読む。
10年前に刊行された本で、当時ニュースを賑わせていたイスラム国の実態や伸長した背景について分かりやすく解説されている。最近はイラクで部族の大連立のスーダーニー政権が発足し、シリア内戦も落ち着きを見せ、内戦に乗じて勢力を伸ばしたイスラム国も影響が落ちている。
イスラム国はスンニ派の過激派である。本書の中でイスラム教の派閥について解説があるので、まとめておきたい。
- ムスリムは世界で約16億人。ムスリムとは「イスラム教の教えに帰依した者」という意味である。イスラムは本来「服従」「帰依」という意味で、服従し帰依する主は唯一神アッラーである。
- イスラム教徒16億人のうち、スンニ派が約84%、シーア派が14%と言われている。その違いは第4代カリフのアリーの後継者に起因する。「スンニ(慣行)」を重視する人たちは、これまで通り仲間たちによる選挙でカリフを選ぼうとした。一方、血筋を重視して「シーア(党派)」を組み、アリーの親族を選ぼうとしたのがシーア派である。信仰の上で両派の違いが顕著なのは「偶像崇拝」に対する考え方と言われる。スンニ派はこれを強く忌避するが、シーア派はあまり気にしない。イランでは街頭に指導者の大きな顔写真が張り出されたりしている。イスラム国はこうしたシーア派の信仰対象を次々と破壊してきた。
- シリアのアラウィ派(シーア派)の人たちはスンニ派のモスクで一緒にお祈りするなど、大半のイスラム教徒は宗派に関わらず穏やかに共存している。
- イスラム国は7世紀のアリーまでの「正統カリフ時代」を理想像としており、本来国境のない一つのイスラム教国を目指している。そのため、第一次世界大戦中に、イギリス・フランス・ロシアの3カ国が結んだ密約「サイクス・ピコ協定」(オスマン帝国の分割支配)に強く反発している。

