「生き残った学徒兵・高校教師の覚書」

東京都立久留米高校教諭・沼野鹿之助さんのレポート「生き残った学徒兵・高校教師の覚書」(『道徳教育の実践』,総合労働研究所,1981/11/16)を読む。

著者は戦中派の世界史教師として、長年都立高校の教壇に立ってきた方で、自ら培った教育実践が披露されている。冒頭「感銘を与える授業なしに生徒指導は成立しない」とある。著者は世界史を教えるにあたり、「物事をきちんと順序を踏んで正しく見る力と自分の意見と考えをその年齢に応じて持ち、それをきちんと言える力と自分の生き方を創っていく」ことが社会科の目的であり、その目的に向かうために、授業の中で生徒を厳しく育てることが大切だと述べる。

また、授業の中身ついてに、著者は次のように述べる。

世界史で展開される個々の事象の中で巧く機会をとらえ、どんな古い時代、離れた国のことを教えていても、生徒の実感、生活意識に食いこんで、今の私たちの生き方として理解できるようにすることが大切だと思う。それが「道徳」教育の一環だと言えるのなら、私は抵抗感のある「道徳」という言葉を心から肯定する。

最後に、著者は次のように述べる。

一番大切なことは、教師というよりも、知識層と呼ばれる私たちが、石川啄木のいう「慢」を捨てろということだと思う。知識層の一番の弱点、己の「学識」で人間を見くだしたとき、「できない」子であろうと誰であろうと必ず背負い投げを食わせる。そのことを自分の前掛の中に隠し、どんなに人権を説き、憲法を語り、フランス革命を語ってもむなしい。

『ネット依存症のことがよくわかる本』

樋口進監修『ネット依存症のことがよくわかる本』(講談社,2013)を読む。
中高生向けの本で、ネットゲームにハマるきっかけや依存症の弊害、治療方法、ネットゲームとの付き合い方などが丁寧に説明されている。

しかし、依存症患者の自力だけでネットから抜け出すことは難しく、時には体を張ることができる大人の男性の力を借りながら、家族や友人などの他者の力で治療していくべきだという結論になっている。

『山里の四季をうたう』

井出孫六・石埜正一郎『山里の四季をうたう:信州・1937年の子どもたち』(岩波ジュニア新書,2006)をパラパラと読む。
タイトルにもあるとおり、1937(昭和12)年、長野県諏訪郡本郷村立本郷尋常小学校(現富士見町立本郷小学校)の3年生が書いた自由口語詩が掲載され、当時の小学校の教員事情や時代背景などが補足されている。

当時、小学校教員は師範学校を卒業することが条件であったが、旧制中学校の卒業者でも代用教員として教団に立つ道が開かれていた。任期は1年で一番教えやすいとされる小学校3年生を受け持つのが慣例となっていたようだ。

また、当時の時代背景として気になって点を書き留めておきたい。1930年代は多くの農家で馬を飼い、農作業や荷物運びで使っていたそうだ。しかし、戦争の色が濃くなってくると、中国侵略のために中国へ連れて行かれ、二度と戻ってこなかった。

また、当時諏訪湖周辺は日本一の製糸業地帯で、周辺の農家は蚕を盛んに飼っていた。豊富な諏訪湖の水と乾燥した気候が要因としてあげられている。

ジブリ風AI画像生成

ネットニュースで話題になっていたジブリ風AI画像生成を試しに使ってみた。
自分の写真を加工したのだが、確かにジブリ映画風の画像が作られた。
特に背景などそのまま映画の原画として使えそうな出来栄えである。
ものの数十秒でこんな画像が作られてしまっては、アーティストにとって、自身のアイデンティティを揺るがす恐怖となってしまうであろう。

『新しい地球観』

上田誠也『新しい地球観』(岩波新書,1971)を読む。
「新しい」といっても、私が生まれる前の50年以上前の本である。
現在では教科書に載っているプレートテクトニクスやマントルの対流、地磁気の逆転などが、学界の大きなテーマであった頃で、当時の世界中の研究者の熱気が伝わってくる内容であった。

プレートテクトニクスの前の大陸移動説を唱えたアルフレッド・ウェゲナーは、ドイツ人なので、第一次世界大戦のために、研究が大いに妨げられてしまった。しかし、戦後の1924年には、気候学者のケッペンとともに『地質時代の気候』を出版している。
そもそもウェゲナーの大陸移動説は、岩石中の磁気を調べることで岩石がどれほど地磁気に対して移動したかを明らかにした古地磁気学によって復活したのである。

また、第二次大戦後、ドイツの莫大な軍事用火薬を処理する必要から、大西洋上の島で爆発させることになった。そのことを知ったヨーロッパの地質学者たちがいっせいに観測を行ったことから、大規模な地震探査法が登場している。

マントルの対流と書いたが、マントルは核の熱を放出するために対流することが明らかになっている。お椀の中の味噌汁を思い出してみると良い。鍋の下からガスで温めると、鍋の底にある水は、温められて熱膨張して体積が増える。体積が増えれば密度は小さくなって軽くなる。そうするとその部分は上に上がってくる。その代わりに表面にあった冷たい部分の水は下へ降りていく。こうやて対流は熱を伝えているのである。マントル対流の場合も、マントルの下の方の温度が高くて、その部分が熱膨張をし、鍋の中の水と同じように、熱対流を起こしていると考える。