平田寛『歴史を動かした発明:小さな技術史事典』(岩波ジュニア新書,1983)をパラパラと読む。
1910年生まれの著者は、戦前の早稲田大学文学部史学科、同大学院を卒業後、1941年に科学史学会の創立に参加している。その後、同大学講師、同大学助教授、同大学教授、同大学名誉教授となっている。早稲田尽くしの生涯であった。
世界史の授業を受け持つ際に使えそうな豆知識がたくさん収録されていた。いくつか紹介したい。
(活版印刷の項で)印刷法は3つに分けることができる。それは凸版印刷と凹版印刷と石版印刷である。
そうか、凸版印刷は普通名詞だったのか。
ノーベル賞で有名なアルフレッド・ノーベルであるが、ダイナマイトで莫大な富を築いて、科学の発展に寄与貢献した人物という評価がある。しかし彼は「何もかもぶちこわすほどおそろしいものをつくれば、敵味方双方の軍隊が一瞬にして抹殺されるから、すべての文明国は恐怖のあまり戦争に背をむけ、軍隊はなくなるだろう」という持論で平和を語っている。今日、彼の持論は、核兵器の保持が戦争の抑止力になるという主張と似ている。
プルトニウムを使った、最初の実験は、1945年7月16日、ニューメキシコ州の砂漠で行われ大成功を収めた。ドイツはすでにその年の5月に降伏し、ヨーロッパでは戦火は消えていた。しかし核兵器を使わずにはすまなかった。ウラン爆弾は8月6日に、プルトニウム爆弾は8月9日に長崎に落とされた。
映画でも観たが、この「使わずにすまなかった」がポイントである。
19世紀後半の自転車には、タイヤに固形ゴムが用いられていた。しかし、これは悪路を走ると、振動が激しく、騒音がひどいものであった。そこで、アイルランドの獣医J・ダンロップが圧縮空気を満たしたゴム製のチューブを使ってみごとに解決した。
フォードのベルトコンベアは有名であるが、これはフォードが始めたものではない。彼はシカゴの肉詰め工場で作業者が動かずに移動するという能率的な方法を見て強い印象を受けた。そこでミシンやタイプライターの大量生産方式を自動車に応用したのである。

