『「悩み」の正体』

香山リカ『「悩み」の正体』(岩波新書,2007)をパラパラと読む。
人間関係や恋愛・結婚・子育て、容姿、生き方など、主に女性をターゲットとした内容となっている。著者曰く「男性たちは、あまり考えることなく仕事に就くことができる。(中略)働く意味まで深く考えずに就職した男性のほうが、途中で疲れやストレスを感じたときには、働くペースをと落としたり、あるいは仕事以外の趣味やボランティアなどに生きがいを見出したり、と働き方をシフトチェンジしやすい」と述べる。一方、「『働くこと」が自分自身の価値や生き方と最初から強くかかわっている女性たちは、たとえその疲労が多忙すぎる結果によるものだったとしても(中略)さらにペースを上げようとする。いずれにしても、そんな女性たちが少しペースを落とすことをまわりからも許され、自分でも受け入れられるのは、いまだに『出産と育児』だけなのではないだろうか」と述べる。

20年前の時代の風潮で、今読んでもピンとこない説明となっている。それだけ時代が進展しているのだろうか。

また、双極性障害(躁うつ病)について、次のように説明する。脳の疾患だけでなく、社会的な病理だということは理解できた。

「気分に浮き沈みがある人」の中には、「ハイテンションと落ち込みを行き来する」というもっと極端なタイプも少なくない。医学的な「躁うつ病」の定義では、「うつ」がメインで、その合間に軽い躁状態の時期が見られるタイプを、「双極Ⅱ形障害」と呼ぶ。精神病理学者の内海健は、この双極Ⅱ型が増加していることを指摘しつつ、これを「大きな物語が失墜したあとのポストモダン社会の病」と説明する。また、社会の空気を敏感に感じ取りときには肩代わりすることもあるうつ病者は、「大切なものを台無しにしてしまったのではないか」「こんな私が存在してよいものか」といった痛ましい問いを自ら引き受け、悩んでいるとも言っている。(中略)

つまり、ストレスや疲労、あるいは理想と現実のギャップなどが原因となって、うつ病になる従来のケースとは違い、今の社会の中では悩みやストレスが時間をかけて「うつ病」という形に結実することさえできないのだ。もっとわかりやすく言えば、うつ病的な要素を色濃く呈しながらも、すべての症状が出そろってうつ病と完成するのを待たずして、また別の症状に巻き込まれて別の精神状態を呈してしまう、というイメージだ。

安田監督のコメント

本日の東京新聞朝刊に、日本アカデミー賞最優秀作品賞を受賞した「侍タイムスリッパー」の安田監督のコメントが掲載されていた。、映画を2回観た私にとって、「明日も頑張っていこうと思える作品を」とのコメントはグサっと刺さる。

『雨宮処凛の「オールニートニッポン」』

雨宮処凛『雨宮処凛の「オールニートニッポン」』(祥伝社新書,2007)を読む。
リーマンショック前の就職難が続いて、30代になっても派遣やフリーターから抜け出せないプレカリアート世代の対談集となっている。湯浅誠さんや松本哉さん、赤木智弘さん、大槻ケンヂさんなど、当時30代前半を中心とした方たちと自分たちの境遇や社会について自由に語っている。
印象に残ったのは雨宮さんの次の発言である。共感するところが大きい。

95年のとき20歳だったでしょう、私たちは、あれがすごいおおきかったんですよ。阪神大震災とオウム事件と戦後50年が重ならなければ、私は絶対右翼に行かなかったと確信しています。あそこで価値観とか戦後の物語が崩れた。(中略:阪神大震災・オウム事件)の上に戦後50年がきたので、「戦後日本の誤り」みたいのを1月と3月に思いきり突き付けられた上で、戦争の映像がガーンと8月に来るわけですよね。(中略)
この辺の世代論ってあまりないですけど、面白いと思うのは、同い年で何かを書いたり、ものを言ったりしている人って、みんなフリーター問題が背景にあるんです。松本哉さんもそうだし。

ちょうど、私の卒業論文も1995年のオウム事件とや靖国問題から始まっているので、興味深かった。
また、大槻ケンヂさんは次のように述べる。

僕は高校を卒業してデザインの専門学校へ入るのですが、1学期で課題が追いつかなくなってやめてしまって、それから2浪したんですね、その浪人時代が、浪人といってもほとんど勉強なんかしてなかったから、あのころはニートといってもよかったですね。若い時期には1年とか2年とか、ニートみたいな時期があったほうがいいような気もする。「何やってんだ、おれ」という時期。あの時に精神が培われているような気もします。

『となりの「愛犬バカ」』

勝俣和悦『となりの「愛犬バカ」』(祥伝社新書,2008)を読む。
著者は帯広畜産大学を卒業され、ペット全般に関わるペットコンサルタント・コーディネーターを生業としており、2万頭のペット犬と、3万人の飼い主と関わってきた人物である。
そんな専門家の著者が、飼い主の無理解によって飼い犬が迷惑している点を、犬の性質を踏まえて丁寧に説明している。また、犬は1万4、5000年前から人間と一緒に生活していたらしい。

大半さらっと読み飛ばしたが、飼い主の「ケージに閉じ込めるのは、かわいそう」という項が興味をひいた。飼い主は家の中でも広々としている部屋ならゆっくりとくつろげるはずだと考えがちである。しかし、犬にとっては広くて隠れる場所のないところでは不安が生じる。そのため、ケージは犬にとって外敵から襲われる心配のない安全な場所となる。躾の行き届いた犬ならば、寝るときには自らケージに入っていく。