『eメールの達人になる』

村上龍『eメールの達人になる』(集英社新書 2001)を読む。
簡潔・明瞭が求められるeメールにおいて、曖昧な日本語を如何にして使っていくのか、実際に村上氏がやり取りしたメールからその手法に解説を加えている。例えば、伝達や事務連絡といった用件は、要点を簡略に伝えることを心掛けるだけでよい。しかし、指示や依頼の際にはシンプルさが求められる一方で、きわめて日本的な謙譲のマナーを守る必要が生じる。確かに日本語のメールでは「〜して下さい」ではあまりに語調が強過ぎる。「〜していただくと助かります」「〜ではないでしょうか」といったように自分の意見を押さえるような言い回しがビジネスの世界では必要だ。

また文章構成においても、高校までの小論文指導では習わないような工夫を紹介している。例えば、日本語の文章でも箇条書きや罫線、「●」や「:」「>(引用符)」などの記号を効果的に用いることで見た目がすっきりする。一方で「”」「’」「−」「/」「@」などのアルファベットのための記号は日本語と入り交じることで逆に文章を分かりにくくする。著者自身も「コミュニケーションは本質的に非常に困難なものだという自覚が必要ではないか」と述べているように、まだまだメール文化も緒についたばかりであり、こうしたルールも過渡的なものであろう。

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