今月戦争に関する本に触れたいと,岩波ジュニア新書を3冊読んだ。
伊東壮『1945年8月6日:ヒロシマは語りつづける』(岩波ジュニア新書 1979)
既に58年も前のことで教科書の上の「出来事」に過ぎなくなりつつあるが,戦争を語りつづける,そして平和を希求し,行動を続けることこそが,戦後生まれの私たちに課せられた「戦後責任」である。中高生向けの本であるが,改めてアメリカの陰に隠れやすいウィンストン・チャーチルの原爆投下責任などについて考えさせられた。極東における覇権を得んがためにソ連参戦前に原爆を用いたアメリカの責任と,国体護持のために戦争を長引かせた天皇,軍部そしてマスコミの戦争責任に対する批判的な視座は何度も確認されてよい。
早乙女勝元『東京が燃えた日:戦争と中学生』(岩波ジュニア新書 1979)
1945年3月10日未明,たった数時間で10万人もの命が消えていった東京大空襲を当時中学生だった著者の目を通して忠実に描かれている。日中戦争での,日本軍による南京大虐殺,重慶への無差別爆撃と考え合わせながら,無差別攻撃の犠牲者の冥福を祈らざるを得ない。
東京大空襲の遂行責任者であった第21爆撃機軍団司令官カーチス・E・ルメーは戦後,米空軍参謀総長にまで就任している。そのルメーは1964年埼玉県の航空自衛隊入間基地に立ち寄った際,天皇と日本政府から「勲一等旭日大綬章」を受け取っている。綬章の理由は,ルメー大将が「日本の自衛隊建設に非常な功労があったから」というのが,衆議院予算委員会での佐藤栄作の答弁である。全くふざけた話である。戦後責任はまだ果たされていないことをつくづく実感する。
長崎総合科学大学平和文化研究所編『ナガサキ:1945年8月9日』(岩波ジュニア新書 1995)
8月9日の惨事だけでなく,江戸時代からの長崎の歴史,そして戦後の原水爆禁止運動にも紙幅を割いている。1960年前後から,中国ソ連の核実験の評価を巡って総評・社会党の原水爆禁止国民会議と共産党系の原水爆禁止日本協議会に分裂したのだが,国会の政治運動に反核平和運動が歪められたことに対する怒りは強い。
□ 原水爆禁止日本協議会公式サイト