『2ちゃんねる宣言』

井上トシユキ『2ちゃんねる宣言:挑発するメディア』(文春文庫 2003)を読む。
巨大掲示板「2ちゃんねる」の管理人である西村ヒロユキ氏の素顔がかいま見えて興味深い内容であった。著者の独断的な偏見が各所に交えられており,ノンフィクション作品としての評価は低いであろう。著者が孫引きしている評論家宮崎哲哉氏の文章が良くも悪くも「2ちゃんねる」の有り様をうまく表している。

「2ちゃんねる」のような完全匿名掲示板ほど,ポストモダンを具現化した社会装置はかつてなかったと思う。テレビや新聞などの表のメディアが「上から下へ」と流れるヒエラルキー的情報伝達システムだとすれば,「2ちゃんねる」は「裏配線」。リゾーミックな,ハチャメチャに繋がった伝達回路を開いていますよね。これこそがポストモダン,「ネットワーク」の具現化だと思います。「2ちゃんねる」ユーザーには表メディアの関係者が少なくないし,いまや表裏メディアが非常に近づきつつある。表のリアリティ配給とは違った,対抗的なリアリティの形成力を秘めた仕組みに成長してきているように見えますね。(中略)人間精神の自由という根源的価値を守るために,政府は太っ腹なところをみせて,2ちゃんねるという言論の新領域を,積極的に擁護すべきだと思います。

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