『津軽』

太宰治『津軽』(新潮文庫 1951)を読む。
大宰の出身地である津軽の旅行記である。生まれ故郷をあちこち気ままに赴き、最後は幼児期に母に代わって育ててくれた元女中との感動的な再会シーンで留め筆されている。大宰にしては珍しく、その元女中のタケとの出会いにおいて、「私はこの時、生まれてはじめて心の平和を体験したと言ってもよい。世の中の母というものは、皆、その子にこのような甘い放心の憩いを与えてやっているものなのだろうか。そうだったら、これは、何を置いても親孝行したくなるにきまっている」とこころおきない素直な人間愛を表明している。

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