『中陰の花』

第125回芥川賞受賞作、玄侑宗久『中陰の花』(文春文庫 2005)を読む。
臨済宗の現役の僧侶である作者が、小説に託して宗教そのものの意義を問い直す。
この世とあの世の間にある「中陰」で、人は生老病死の悩みから「ほどけ」て、魂は微塵となり成仏するという。最近の宗教関係者は死についての発言を避ける傾向にあるが、死の仕組みを考え納得することで、生きることにも積極的になれる。亡くなったおがみやのウメさん、亡くなった水子を信心から供養することで、周囲の人たちのより深く生きようとする姿を描く。印象に残る作品である。
表題作の他、乳児を遺棄した母親の隠遁生活を描く『朝顔の音』も印象的であった。

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