伊藤たかみ『ギブソン』(ポプラ社 2005)を読む。
ちょうど舞台は昭和が終わる1988年、とある郊外の町、中学2年生のグループがバンドを組み、練習を重ね、文化祭で「ガンズ・アンド・ローゼス」の曲を完奏するまでのドラマである。青春小説であると同時に、現在30代半ばの団塊ジュニア世代の懐古小説ともなっている。
ちょうど私自身も小説で描かれた1988年に中学3年生であった。昭和天皇の下血が毎日のように報道され、ニュータウン、金余り現象、消費税、受験戦争、 JーWAVEの開局など、急激に世相が変化していったあの時代感覚を共有している。小説を読みながら、周囲がどんどん先へ行っているのに、自分だけが取り 残されてしまったのではという当時感じた焦燥感を少しだけ思い出した。