『集中豪雨の話』

夏休みの3冊目

二宮洸三『集中豪雨の話』(出光科学叢書,1975)をパラパラと読む。
微積分の数式が多く、ほとんどのページを読み飛ばした。しかし、現在では「線状降水帯」と呼ばれる集中豪雨の項は目が止まった。線状降水帯とは積乱雲がほぼ同じ場所で次々と発生し、風に流されて行列のように並んでできる細長い形の降水域のことで、激しい雨が何時間と降り続き、土砂災害や洪水を引き起こすものである。
1975年刊行の本書では線状降水帯のことを「豪雨のバンド構造」と称している。少し引用したみたい。

このようなエコー(積雲対流)バンドの停滞による細長い豪雨域の出現は、数多く報告されていることから、豪雨のバンド構造は、豪雨の起こり方の一つの典型だと考えられます。(中略)なぜ、このように集中した収束帯がこのような長さにわたって、しかも数時間維持されるのか、現在のところわかっておりません。なぜなら、このような収束帯は広い洋上に発生するため、軌道衛星の観測によってようやくその存在が明らかになってきたばかりだからです。洋上でこのような現象を把握するだけの高層観測が行なわれる可能性は将来も少ないでしょうが、やがて、日本が打ち上げるであろう気象静止衛星のデータなどによる研究が期待できると思います。

日本初の気象観測衛星ひまわりが打ち上げられたのは、本書が刊行された2年後の1977年の話である。線状降水帯の存在は50年以上前から知られていたが、その研究が始まったのは1977年以降のことで、この数年やっとテレビの天気予報でも広く知られるようになったのだ。