『地図の歴史:日本篇』

織田武雄『地図の歴史:日本篇』(講談社現代新書 1974)を読む。
先日来、今年の夏休みで四国の酷道(国道)を突っ切ろうか、紀伊半島を周遊しようかと、地図とにらめっこしていたので、ふと手に取ってみた。
新書にしては随分と版を重ねている本で、手にしたのは2002年発行の第18版であった。

放送大学の教科書か地理学の参考書のような内容で、奈良時代の行基によって描かれた地図と江戸時代伊能忠敬の実測日本図の二つを柱としながら、荘園管理や参勤交代、鎖国などの政治テーマと密接に絡む地図の歴史について述べられてる。特に軍事的理由から正確な地図を表にしたがらない江戸幕府が伊能忠敬の地図を半世紀もお蔵入りさせたエピソードなど興味深かった。
冒頭、筆者は次のように述べる。

地図とは、大地にしるされた人間の足跡であり、未知の地への飽くことなき願望の証しであり、それはそのまま、それぞれの時代の人間が、どのように世界を把えていたかを、私たちに示してくれる確かな歴史であるといえよう。

単純に高校生が憧れそうな格好いい文である。筆者は地図の進化の歴史が、人類の世界認識および行動範囲の拡大の歴史であると定義付けている。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください