佐多稲子『佐多稲子集』(新潮社 1961)を手に取ってみた。
作者が24歳の時に書いた処女作小説『キャラメル工場から』(1928)だけ読んでみた。小学校5年生の時に貧窮のどん底に落ち、向島から神田まで通ったキャラメル工場での実際の体験がほぼそのまま小説となっている。
他の作品には目を通さなかったのだが、解説や年譜が興味深かった。彼女は二十歳で結婚しているのだが、結婚生活は惨憺たるもので自殺未遂を繰り返している。そして、芥川龍之介に自殺の経験を訊ねられている。芥川自殺の3日前である。その後エンゲルスやレーニンの著作を読み、窪川鶴次郎や中野重治、堀辰雄、壺井栄中条(宮本)百合子たちと作品を発表するようになった。まさに、芥川の自殺を象徴するようなエピソードである。
『佐多稲子集』
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