『ネコババのいる町で』

瀧澤美恵子『ネコババのいる町で』(文藝春秋 1990)を読む。
第69回「文學界」新人賞と第102回芥川賞を受賞した表題作の他、『神の落とし子』『リリスの長い髪』の2作が収められている。
芥川賞受賞作である『ネコババ〜』は、女性的な視点でのみ一方的に物語が進行していき、何の面白さも感じなかった。

『ネコババ〜』だけで読むのを止めようかと思ったが、芥川賞作家は、受賞作以外の作品の方が面白かったりもするので、あまり期待せずに他の2作品も読んでみた。豈図らんや、他の2作の方が断然面白かった。近所に住む娘っこに見事に仕組まれる若旦那の惨めな人生を描いた『神の〜』、女性の気まぐれに振り回される『リリスの〜』のどちらの作品も、女性の爛漫な計算高さに騙される男性が描かれている。

特に『神の〜』の方は、結婚生活に失敗した主人公が、家族に見捨てられ、社会に見捨てられ、ゴミ収集で糊口しのぐだけの廃人のようになってしまう。太宰治の『人間失格』に似た展開で、身につまされるような読後感が残った。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください