小倉千加子『結婚の条件』(朝日新聞社 2003)を読む。
かなり長い間本棚に眠っていた本である。
influenzaの薬の副作用でボオーッとした頭でも読みやすい本はないかと、本棚の奥から引っ張り出してきた。
2002年から2003年にかけて雑誌「一冊の本」(朝日新聞社)に連載されたfeminism論がまとめられている。
雑誌媒体に掲載されていた内容なので、当時の芸能人の恋愛事情や女性誌のタイプなどよく分からない例もあったが、女性・男性を問わず、結婚が難しくなった時代をうまく分析していた。
筆者は女性の立場から、学歴や母親の期待、自己投資、主婦という選択、結婚相手としての女性の価値、女性の「勝ち組」基準などなど、他人よりも上に行けば良しとする男性の価値基準よりも、複雑怪奇に入り組んだ女性ならではの生き方の難しさを丁寧に紐解いていく。
結婚の難しさを、単に収入や容姿、恋愛の上手下手の問題に限定させず、教育や学歴、世代の問題にまで拡げていく意欲作となっている。
「婚活」という言葉もなく、「格差」もまだ今ほど人口に膾炙していなかった2003年の段階で、筆者は次のように論をまとめる。
女子学生は、現在の自分の生活水準を保障してくれる男を探し、男子学生はユートピア的場所となる女を探す。しかし、そんな理想の相手はどこにもいない。いやしかし、理想の相手を見つけて幸福な結婚をしている人は現にいるではないか。自分はなぜそこから締め出されるのか。なぜ夢を追ってはいけないのか。夢を実現した一部の者への復讐の時代がこれからはじまると、私は密かに覚悟しているのである。