苫米地英人『残り97%の脳の使い方:人生を思い通りにする!「脳と心」を洗う2つの方法』(フォレスト出版 2008)を読む。
年の初めということもあり、懲りもせずに、また「自己啓発」本に手を出してみた。
認知心理学の立場から、他者を動かす方法と、自分を上手くコントロールする2つの方法がまとめられている。
専門用語を使ってはいるが、大変読みやすい文章であった。高い目標を無理して意識するのではなく、現実の思考の枠組みそのものを少しずつ変えていくことで、目標ラインにあった考え方や身体感覚を手にいれることができ、努力をすることなく自分を変えられるという内容である。特に成功体験や失敗からの復帰体験を思い返すことで、自己評価が高まり、その自己評価に見合った思考に慣れ、それまで見えてこなかった盲点が発見でき、目標を達成する道筋と自信が得られるのである。そのために手帳の有効な活用も指南している。
著者の主催するクラスやセミナーの告知も入るが、読後感は良かった。著者の経歴やホームページを見ると、こんな人間が世の中にいるのだなあと感心してしまう。丁寧なことに、あとがきの中でもう一度分かりやすく自説をまとめている。
本プログラムのエッセンスは極めて単純です。我々は、自分の過去の情動体験などの経験、そして両親や先生や人からいわれたことが信念をつくり、それが自己イメージをつくり、自分自身の能力の評価であるエフィカシーのレベルを決定しています。そしてそのレベルの空間がコンフォートゾーン(安心して能力を発揮できる現状の場)となっています。
これにより、過去の信念に即したことしか認識することはできません。これをスコトーマ(盲点)といいます。コンフォートゾーンを外れるとホメオタシス(恒常性維持機能)の力ですぐに元に戻ろうとします。その戻り方は極めて創造的で、まさに創造的無意識と呼べるものです。
これに対して、これまでのコンフォートゾーンの外側にゴールを設定し、そのゴールに見合ったレベルのエフィカシーをコンフォートゾーンにできるならば、スコトーマが外れ、ホメオタシスで自動的に、また極めて創造的にゴールを自然に達成することができるということです。
新たなコンフォートゾーンの中にいるのですから、ゴールを達成する過程は楽しくてしょうがないし、極めて生産性が高くなります。
また、やりたいことだけをやっているという感覚になります。もちろん他人からは、すごく熱心に努力しているように見えるかもしれませんが、本人には、ゲームに熱中する子供のように、楽しいからどんどんやってしまう、その結果ゴールを達成してしまう。ただそれだけです。
そして、このために重要なことは、ゴールに合わせたエフィカシーレベルのコンフォートゾーンをいかにリアルに感じるかです。(中略)ゴールに合わせたエフィカシーのコンフォートゾーンの世界が、現実の世界よりもリアルになれば、それが現実になるのです。私たちの脳はそういうものなのです。というよりは、私たちの脳内情報処理が生み出しているこの世界はそういうところなのです。
(中略)やりたいことだけを楽しんでやっている。これがまさに今コンフォートゾーンの中にいる証拠であり、ゴールをしっかりと見つめているならば、確実にそのゴールは達成されるのです。