日別アーカイブ: 2016年12月11日

『カラー版 恐竜たちの地球』

冨田幸光『カラー版 恐竜たちの地球』(岩波新書 1999)を卒読する。
国立科学博物館地学研究部で古生物学を専攻する著者が、三畳紀から白亜紀末までの1億6千万年の間に進化した恐竜の生態について写真入りで説明している。
子ども向けの絵本にあるような迫力のあるイラストはなく、化石の写真だけがひたすら並ぶ。新書一冊で100属近い恐竜を取り上げている労作であるが、系統学の見地に立った様々な学説の紹介が長ったらしく、恐竜そのものの魅力は伝わってこなかった。
ただし、トリケラトプスやティラノサウルスなどの大型恐竜は化石の写真だけでも十分に迫力が伝わってきた。

『博物学の巨人 アンリ・ファーブル』

奥本大三郎『博物学の巨人 アンリ・ファーブル』(集英社新書 1999)を読む。
NPO日本アンリ・ファーブル会理事長を務める著者が、フランスの博物学者ファーブルの生涯を追う。
ファーブルは、狩蜂やスカラベの生態、後にフェロモンと呼ばれる伝達物質についての研究で知られる全10巻に及ぶ『昆虫記』の著者として知られる。しかし、彼は昆虫や植物の分野だけでなく、数学と物理学の二つの学士号を有し取得し、さらには農芸化学や科学全般にも長けており、歴史、地理、家事についての本まで書いている万能の人物であった。著者も南方熊楠との共通点を指摘している。
冒頭部分で、ファーブルを初めて邦訳したのは、無政府主義者として知られる大杉栄という件がある。妙な顔合わせだな思っていたのだが、反キリスト権威を貫いたファーブルの生涯を最後まで追うと合点がいくという、なかなか込んだ展開になっている。