奥本大三郎『博物学の巨人 アンリ・ファーブル』(集英社新書 1999)を読む。
NPO日本アンリ・ファーブル会理事長を務める著者が、フランスの博物学者ファーブルの生涯を追う。
ファーブルは、狩蜂やスカラベの生態、後にフェロモンと呼ばれる伝達物質についての研究で知られる全10巻に及ぶ『昆虫記』の著者として知られる。しかし、彼は昆虫や植物の分野だけでなく、数学と物理学の二つの学士号を有し取得し、さらには農芸化学や科学全般にも長けており、歴史、地理、家事についての本まで書いている万能の人物であった。著者も南方熊楠との共通点を指摘している。
冒頭部分で、ファーブルを初めて邦訳したのは、無政府主義者として知られる大杉栄という件がある。妙な顔合わせだな思っていたのだが、反キリスト権威を貫いたファーブルの生涯を最後まで追うと合点がいくという、なかなか込んだ展開になっている。
『博物学の巨人 アンリ・ファーブル』
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