小山田浩子『穴』(新潮社 2014)を軽く読む。
第150回芥川龍之介賞を受賞した表題作の他、2編が収録されている。
仕事を辞め、夫の実家近くに引越ししたばかりの子どものいない主婦(作品中では「お嫁さん」と呼ばれる)を主人公として、ただ水を撒くしかない義祖父やひきこもり生活を続ける義兄との出会いを通して、生産社会の中でしっかりとした活躍の場を与えられない人たちの生きづらさが描かれる。
しかし、読み始めてすぐに後悔してしまった。近年の芥川賞にありがちな日常生活に潜む恐怖や人間関係の不安をテーマとしており、「主人公の半径2メートル」の世界の中だけで話が展開していく。
ひょっこりと街中にできた意味不明な「穴」や正体不明の獣といった、非日常的なメタファーを色々と意味付けしながら楽しむ類の作品なのだが、「正直、どうでもいいじゃねえか」と内心毒づきながら読んだため、全然ストーリーが頭に入ってこなかった。結局、他の2編は読まず仕舞いとなってしまった。
もう少し落ち着いた気持ちで読めば感想も違ったものになったかもしれない。