一 人口分布の地域的特色
人間が日常的に居住している地域をÖkumene,居住していない地域をAnökumeneという。人口の増加や環境の変化などにより「人類は移動・拡散し,未開地を開拓してÖkumeneを拡大してきた。およそ70億人もの人口を抱える現在,全陸地に90%が開拓されてきた。
人間の居住限界には,水平限界と高距限界があり,水平限界には,さらに,寒冷限界と乾燥限界とがある。寒冷限界は,Ökumeneの両極地方への限界であり,tundra気候の最暖月平均気温10度の等温線とほぼ一致する。乾燥限界は,砂漠気候の年降水量250㎜の農業限界線とほぼ一致する。高距限界は気温との関係が密接であるが,およそ標高3500mの森林限界とほぼ一致する。
世界の平均人口密度は10年現在50.7人/㎢となっている。しかし,その分布は,Asiaでは130.6人/㎢,Oceaniaでは4.3人/㎢となっており,自然環境だけでなく,土地利用や産業構成,経済の発展段階などによって異なる。
二 国家
冷戦の終結後,ソ連の解体に伴い独立国が増加して,現在約200カ国ある。独立国は,「主権,国民,領域」を有しており,これらを国家の三要素と呼び,国際法上の国家の承認要件となっている。
〈主権〉主権は,他国からの制約を受けないで,独自の政治を行う,最高,独立,絶対の国家主権である。基本的義務として条約履行,不干渉などが課せられている。主権は支配下の住民と地域性の如何に関わらず,その国内に政治的統一性をもたらす方策を作りだすものである。
〈国民〉国民とは国籍をもつ国家の構成員である。一つの民族が一つの国家をつくるという国民国家の考え方は,近代Europeで発達したものであるが,現実の世界では,全ての国民が一つの民族に属するという「単一民族国家」はほとんど存在せず,多くが複数の民族からなる「多民族国家」である。
〈領域・国境〉領域は国家主権の及ぶ範囲であり,領土・領海・領空からなる。領土の境界である国境は大きく自然的国境(SpainとFranceの境界となるPyrénées mountainsやAmericaとMexicoの境界であるRio Grande river)人為的国境(LibyaとEgyptを分ける東経25度線)に分けることができる。領海は領土に接している一定幅の海域で,一般に12海里(22km)まで認められる。領空は領土と領海の上空であるが,宇宙空間までは及ばない。また,沿岸から200海里(370km)までの海域が排他的経済水域とされ,水産資源や鉱産資源などに対して沿岸国の権利が認められている。この条約によって,日本はEEZの面積が国土の10倍に広がっているが,公海全体が狭められたため,遠洋漁業に大きな打撃を受けた。
三 人種
人種は,身長の大小や皮膚・毛髪の色・頭の形状などの身体的特徴に基づく分類であり,Mongoloid・Caucasoid・Negroidなどに分けられる。Mongoloid(黄色人種)は黄色から銅色の皮膚,太く黒い直毛,体毛は少なく,褐色の目をしているのが特徴である。Asiaを中心に分布し,日本人も含まれる。Caucasoid(白色人種)は白色から褐色の皮膚,体毛は多く淡青や暗褐色の目,高い鼻が特徴である。Negroid(黒色人種)は黒色の皮膚,縮れ毛の頭髪,体毛は少なく,褐色の目と低く幅広い鼻が特徴である。
四 民族
民族は,言語・宗教・生活様式などの文化的特徴に基づく分類である。その中でも言語は人々が文化集団内で生活を営む際に互いに意志を通じ,世代間で文化を伝達する手段であり,最も基本的な文化の構成要素であると言える。Asia系・Europe系・Africa系に大別される。
〈Asia系〉言語的にはChina/Tibet語族,Ural語族,Altaic語族があり,12.1億人が使用する中国語が含まれているため言語人口は多い。また,多くの地域で仏教,儒教,道教などが,TibetではLamaismが信仰されている。Ural語族Hungary語,Finland語,Estonia語などが含まれる。
〈Europe系〉言語的にはIndia/Europe語族やAsia/Africa語族などが含まれる。India/Europe語族にはEuropeやRussian,西Asia,Indiaにかけて分布しており,Spain語やPortugal語,英語,France語などは南北AmericaやAustraliaなどの「新大陸」で広く話されている。宗教はChristianityが多い。また,Afro/Africa語族も含まれ,Hebrew語やArabia語を話すIslam教徒も多い。
〈Africa系〉北緯5度以南の地域でNiger/ Kurdufan諸語が使用されている。
参考文献
『新編詳解地理B』(二宮書店 2013)
『新編地理資料』(東京法令出版 2012)