月別アーカイブ: 2012年11月

『食料問題ときみたち』

吉田武彦『食料問題ときみたち』(岩波ジュニア新書 1982)を読む。
衆院が解散し、原発、消費税とTPPの3点が大きな争点となっている。「TPPから日本の食と暮らし・いのちを守るネットワーク」のホームページを見ると、食料自給率はTPPの参加により40%から13%まで下落するとの予想まで出ている始末である。今後のあるべき食料政策を国民的議論の俎上に乗せた上で、衆院選挙を捉えていかなければならない。

アメリカ政府が1980年に発表した『西暦2000年の地球』で発表されたタイの環境破壊の記載が興味深かった。以下、孫引きです。

タイのアメリカ大使館はつぎのように報告している。薪の拾集、焼畑農業、保護森林への非合法的な大規模な侵入といったことがあいまって、タイでは完全に地上をおおうような森林は、1987年までに事実上はぎ取られてしまい、もっとも楽観的に予想しても、1993年以降には、もはやタイに有効な森林が残存する見込みはない。森林を伐採した結果として、タイは、洪水と乾燥にいっそう苦しむようになり、可耕地域の面積は表面的に拡大しているようにみえても、土壌浸食がすでにはげしく、この状況は今後さらに苛酷になるであろう。

Wikipediaによると、昨年発生したタイの大洪水であるが、自然災害による経済損失額の大きさでは、東日本大震災、阪神大震災、ハリケーン・カトリーナに次ぐ史上4位であったそうだ。しかし、この「人災」はすでに30年前に予想されていることであったのだ。

TPPに完全参加しても輸出は増えず、日本の農業が破壊されるだけ、ただそれだけである。しかし、日本の田んぼは米を作るだけでなく、大雨時には貯水ダムの役割を果たすなど、環境保全の一環を担っている。タイの例を見れば分かる通り、日本の農業、とりわけ稲作の破壊は、そのまま環境の破壊へ繋がっていく。

筆者は最後の章で、次のように述べる。30年前の書かれた中高生向けの新書の一節であるが、現在の政治家に投げかけたい言葉である。

21世紀にむかって、世界の食料事情が必ずしも楽観できず、国ごとの不平等がひろがると予想されているとき、少しでも国内生産を高めて輸入を減らすことは、私たち自身のためばかりでなく、未来の世界、とくに発展途上国の飢えた人々に対する日本の責任ではないだろうか。

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』

幸手のシネプレックスへ、庵野秀明総監督『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』(2012 T-JOY)を観に行った。
あまりの展開の早さに話がよく飲み込めず、家に帰ってからWikipideaで内容を確認して、やっとこさ整理することができた次第である。冒頭で初号機が救出されたことや、ネルフの現状など、後から辻褄を合わせて飲み込むことができた。

上映に先立って特撮短編映画『巨神兵東京に現わる』が放映された。『風の谷のナウシカ』の巨神兵というよりもヱヴァンゲリヲン初号機のような出で立ちで、世界の破壊の使者なのか、創造主なのか、渾然とした内容であった。

[youtube]http://www.youtube.com/watch?v=mlnAYQ1R_5k[/youtube]

『シンプル・プラン』

地上波で放映された、サム・ライミ監督『シンプル・プラン』(1998 米)を観た。
平凡な暮らしをしていた人たちが、あるきっかけで大金を盗もうと考えてしまったばっかりに、犯罪や殺人に巻き込まれていく悲劇を描く。最後は元の暮らしに戻ることで安住を得るという場面で終わる。

『「源氏物語」男の世界』

田辺聖子『「源氏物語」男の世界』(講談社文庫 1996)を読む。
教材研究のために手に取ってみた。薫、桐壺院、頭中、朱雀院、そして玉鬘に言い寄った大夫の監の5名を取り上げ、それぞれの一代記として物語が再構成されている。 薫のひねくれようや桐壺院の配慮、頭中の政治的意識など、女性視点からは描かれない男性の心理に迫っている。田辺さんの創作的なくだりも多々あるが、物語として楽しむことができた。
授業の中の雑談として活用してみたい。

『GANTZ』

地上波で放映された、佐藤信介監督、二宮和也・松山ケンイチ主演『GANTZ』(2011 東宝)を2部作続けて観た。
大ヒットした同名作の漫画の映画化作品である。地上波放映による一部カットもあったためか、最後は話の脈絡がはっきりとしなかったのだが、迫力ある映像と若い役者のひたむきな演技に引き込まれ最後まで楽しむことができた。 また、ほとんどセリフはないのだが、刑事役の山田孝之さんの演技が印象的であった。名バイ・プレイヤーとしての今後の活躍を期待したい。