竹内一正監修『世界を変えた アップルの発想力』(成美文庫 2010)を読む。
松下電器からアップルコンピュータに転職した著者が、アップルコンピュータ在社中に見聞きした言葉やサイトや雑誌で目にした言葉が解説を交えて多数収録されている。appleⅠや初代Macintoshの製作販売に携わった人たちの希望に満ちた言葉、ピクサー社で出口の見えない中に希望を見いだそうとする人たちの言葉、そしてipodやnextで希望を現実にすることの楽しさを感じる人たちの言葉、中小企業の社長室の壁に掲げてある標語のような言葉がずらりと並んでいる。
その中で、スティーブ・ジョブズと共にピクサー社を創設したエド・キャットムル氏の言葉が気になった。彼は、少ない予算と限られた時間の中で『トイ・ストーリー』などの製作に携わってきたのだが、彼は時間や予算、人材のがんじがらめの制約があってこそ、クオリティの追求が行われるとし、次のように述べている。
制限を与えられることによって、創造性が刺激される。
この言葉は、ピクサーという特殊な企業だけでなく、広く日本でも有効性を持ちうる言葉だと思う。
話は変わるが、制限や規定を外すことで個性や自主性が生まれるという誤解が日本の教育全般に蔓延している。勉強やスポーツに限らず、いたずらな統一ではなく、一定の枠や規制を設けることにより溢れてくる力や意欲を育てていきたいと思う。と同時に、そうした漲りを見極める勉強もしっかりとやっていきたい。