月別アーカイブ: 2010年11月

パンフレット研究:大学コンソーシアム京都

財団法人大学コンソーシアム京都のパンフレットを読む。
京都地域を中心とした約50の大学・短大の単位互換制度を始め、図書館共通閲覧システムやインターンシップ、また学生交流事業として「京都学生祭典」や「京都国際学生映画祭」などを手がける。受験生集めや地域の活性化などを目論見、京都の企業や京都府 や京都市も絡んだ一大プロジェクトである。京都全体が一つのキャンパスであると、単位互換制度に力を注いでいるものの、京都精華大学の「現代音楽論」や京都産業大学の「京都地名探訪」などカルチャー講座の域を出ない科目が多い。また加盟大学の中には、受験生集めに苦労している大学や東京の大学も名を連ねており、総花的な形態となっているのは否めない。

『国道20号線』

小林紀晴『国道20号線』(河出書房新社 2001)を読む。
先日、センターの問題集で同じ著者の『写真学生』を少し読んだので手に取ってみた。
長野出身の著者の思いが込められており、東京と長野を結ぶ国道20号線を舞台にした6編のショートストーリーが展開される。どの作品も、主人公は故郷長野と無理に断絶を作ろうとする。その無理な生き方が、現在の時間に流されていく主人公の姿を浮かび上がらせる。

『命にあいたい:Baby meets Mama』

穴井夕子『命にあいたい:Baby meets Mama』(実業之日本社 2003)を読む。
スムーズな展開やこなれた文体など、いわゆる「タレント本」のカテゴリーに入るのであろう。不妊治療から人工授精、出産にいたる嬉しさや悩み、痛さが描かれるのだが、いかにも型にはまったような場面転換や伏線が嫌でも目につく。しかし、女性ならば共感できる部分がきっとあるに違いない。

『崖っぷち高齢独身者』

樋口康彦『崖っぷち高齢独身者:30代・40代の結婚活動入門』(光文社新書 2008)を読む。
富山国際大学で教育社会心理学の講座を担当する著者が、自身の38歳から始めた結婚活動の社会的な位置付けに始まり、数年にわたるお見合いパーティーや結婚相談所でノウハウを語る。自ら「結婚弱者」を自認する著者は、「男女とも30代半ばをすぎている人の、自分はまだ『格好いい』『モテる』などといった考えはしょせん幻想でしかない」ときっぱりと言い切る。そして、結婚問題は個人的な嗜好の問題ではないと論じる。フリーター・ニート・引きこもりといった社会にうまく適応できない人の増加と、晩婚化・未婚化は、共にコミュニケーション弱者であるという根っこでつながっている。そのため著者は、きちんとした常識や他人にきちんと対応できるスキルを身につけ、真剣かつ誠実に、そして傷つくことを覚悟しつつ捨て身で自分を変えていく必要性を訴える。

『搾取される若者たち』

阿部真大『搾取される若者たち:バイク便ライダーは見た!』(集英社新書 2006)を読む。
大学を1年休学し実際にバイク便で働いた著者が、同僚との会話や自身のバイクに関する造詣に交えて、団塊ジュニア世代の働き方に警告を発する。
著者は、やりたいことを仕事にできないニートと、やりたいことを仕事にできたワーカホリックの二極化が若者たちの間で進行していると述べる。そして、バイク便だけでなく、トラック運転手やケアワーカー、システムエンジニアなども、好きでやり甲斐がある分だけ、どんどん危険な不安定な仕事に邁進してしまう「職場のトリック」を解き明かす。
大変読みやすい文章であって、子どもの様子を片目に、さらっと読むことができた。