〈生徒に送った言葉〉
ご卒業おめでとうございます。
昨年度は古典ないし現代文を、今年度は現代文を担当しました。特に今年度の2学期には、試験を挟んで約2ヶ月、森鴎外の『舞姫』を扱うことができ、国語科 の教員冥利につきる日々でした。授業の中でも触れましたが、『舞姫』の主題は、日清・日露戦争へと突き進む国家の土台を築いた山県有朋(天方伯)について いくか否か迷った挙げ句、最悪の形で帰国(出世)の道を選んだ主人公太田豊太郎の決断にあります。
文学というのは、個人の内面を通して社会を見る、また社会の動きが個人の悩みを誘発する、そうした個人と社会のつながりを表すものです。高校の国語の授業 で、『羅生門』『山月記』『こころ』『舞姫』と近代文学の代表的な4つの作品を扱ってきましたが、どれも登場人物を巡る社会状況と心の葛藤がテーマでし た。
さてこれからはみなさん自身が「文学」を紡いでいく番です。様々な登場人物がぶつかり、政治や経済が揺れ動いていく手に汗握るドラマを演出してください。