月別アーカイブ: 2009年9月

パンフレット研究:拓殖大学

拓殖大学のパンフレットを読む。
1900年台湾協会が台湾方面で活躍する人材養成のために設立した台湾協会学校が起源。1904年に台湾協会専門学校に、18年に拓殖大学となった古い伝統のある学校である。
初代学長は日韓併合を積極的に推し進めた首相桂太郎が務め、3代学長には台湾経営に顕著な働きを見せた後藤新平が就任するなど、元々は台湾植民地経営の尖兵養成的な意味合いの強い学校であったようだ。「拓殖」という語を辞書で引くと、「開拓および植民を事業とする」と出てくる。

現在では商学部、政経学部、外国語学部、、国際学部、工学部の5学部を設置する中規模大学となっている。商学部と政経学部の3・4年生、および大学院生は茗荷谷の文京キャンパスを利用するが、後はJR高尾駅から直通バスで5分ほどの不便なキャンパスを利用することになる。都心のキャンパスを利用する商学部や政経学部は就職活動その他至極便利であるが、他の文系学部は特にこれといった特徴もない。あの山奥のキャンパスに定員の3倍も4倍も受験生が集まっているのが不思議なのだが、ネームバリューのなせる技であろう。

『しんぼる』

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松本人志主演・監督映画『しんぼる』(2009 松竹)を観に行った。
「不条理でシュールな発想に、これまで押したことのない脳ミソのツボを刺激されているうちに、壮大なスケールの世界観へと上り詰めていく」という宣伝の文章にある通り、観客の解釈を受け付けない意味不明な世界が画面いっぱいに展開される。
前半は村上春樹の『世界の終わりとハードボイルドワンダーランド』のような二つのパラレルワールドの話が進むが、後半は世界を操る神に近づこうとする男を象徴的に描く。お笑いと純文学を組み合わせた新しい映画で、次回作も期待したい。

『大密室』

有栖川有栖・恩田陸・北森鴻・倉知淳・貫井徳郎・法月綸太郎・山口雅也『大密室』(新潮社 1999)を読む。
「小説新潮」に載った「密室」をテーマにした短編が集められている。ちょっとした時間を埋めるのにちょうど良い分量で飽きなかった。

『96時間』

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子どもをお風呂に入れてララガーデンへ映画を見に行った。
リュックベッソン制作、ピエール・モレル監督、リーアム・ニーソン主演映画『96時間』(2008 仏)を観た。
フランスに旅行中に売春組織にさらわれた娘を、元工作員の父が命がけで助けるという単純な話なのであるが、映像も展開もテンポが良くて最後まで飽きなかった。古き良きハリウッド映画のような面白さが詰まっている作品であった。

『30代未婚男』

新学期が始まって日曜日の昨日まで忙殺の日々であったが、今日は一日代休だったので、子どものお迎えや散髪、近所のコジマ電気での買い物など、30後半のぐうたらおやじの休みを満喫した。

大久保幸夫・畑谷圭子・大宮冬洋『30代未婚男』(NHK出版 2006)を読む。
少子化の原因の約3割は結婚カップルの少産化で、約7割が晩婚化で説明できるとし、特に30代男性の結婚観や恋愛観に迫る。
特に30代男性の未婚の問題は、その個人の主観の問題ではなく、これまでの教育や雇用、労働環境と密接に結びついた、れっきとした社会問題であることが分かる。著者は最後に次の一節を加えている。

個人の中の危うい変化が一方にあり、また社会構造のゆがみが一方にあって、そこから未婚・晩婚問題も生まれるし、フリーター・ニートも生まれる。この2つはさまざまな点で共通点がある。低所得・格差や過重労働は、労働そのものの問題だが、結婚にも影響を与えている。(女性との)コミュニケーション力や(結婚に踏み切る)決断力の問題は、就職の意志決定や仕事上の成功も左右している。パラサイトはフリーター、ニートでその比率が高い。成功モデルとしてのロールモデルが不在であることは、キャリア上でも同じことがいえる。ミスマッチは量から質へと価値転換が起こる中で必然的に起こる現象であり、結婚市場でも労働市場でも起こっている。
(中略)30代未婚男問題はきわめて個人的な問題だが、その背景理由には、人間を幸福にしない何か大きな要素が存在していて、その要素は結婚問題に限らず、その他の社会問題を引き起こすかもしれない大きな危険を孕んでいる。そしてこのままいくといつの間にか問題解決が困難になって、自分が不幸になるかもしれないということに個人は気づかない。しかし気がついたときには手遅れで、大きなハンディを背負うことになる。