芥川龍之介短編集『奉教人の死』(新潮文庫 1968)をぱらぱらと読む。
先日の吉田精一氏の分類で、「切支丹もの」に属する作品集である。しかしキリスト教の教義を宣伝するような内容ではなく、キリストという絶対善と俗人の悪、引いてはヨーロッパと日本の対比を浮かび上がらせるような作品が多い。それらの中で、表題作の『奉教人の死』と『きりしとほろ上人伝』の2作はきっちりと読んだ。子どもにも分かりやすい童話を読んでいるような感覚である。しかし、どちらも江戸時代の文禄、慶長の頃の文体にならっており、彼の才覚の一端が垣間見える作品であった。
『奉教人の死』
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