月別アーカイブ: 2008年5月

『あの空をおぼえてる』

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冨樫森監督、竹野内豊・水野美紀主演『あの空をおぼえてる』(2008 ソニー・ミュージックエンタテインメント)を仕事帰りにララガーデンへ観に行った。それにしても映画はいい。映画の内容うんぬんよりも、映画館という日常生活から隔離された空間に身を置くだけで、普段たまりにたまったストレスが雲散霧消する気がする。
話の前半を観た限りでは、娘を交通事故で突然失ってしまい残された家族が、死を受け入れ再び家族としての絆を取り戻すというありがちな展開かと予想を立てていた。母役の水野美紀の演技が中途半端であり、お涙頂戴的な仕掛けが見え見えであった。しかし、中盤から子役の広田亮平くんと吉田里琴ちゃんの見事な演技にどんどん引き付けられてしまった。そして、後半は、家族たちが徐々に死を受容していくのと並行して、広田亮平くん演じる英治くんが見事に大人へと成長していく姿がスクリーンに大きく描き出される。話が進むにつれて顔も言葉遣いも変わっていくその成長ぶりに驚かされる。

ちょうど私が大学入学直前に池袋の名画座で観て深く感動した相米慎二監督の『お引っ越し』という作品に、話の展開や子役の演技が似ているなと思って観ていた。家に帰って冨樫森監督についてネットで調べたところ、冨樫監督は長く相米慎二監督作品の助監督を務めてた監督で「相米慎二監督の最後の弟子」とも言われているそうだ。合点がいった。

思い返せば、10年ほど前、ホームページを作り始めた頃、「勝手『お引っ越し』ファンサイト」なるものまで作っていたのだ。是非、相米監督作品『お引っ越し』と合わせて観て欲しい作品である。

□ 映画『あの空をおぼえてる』 オフィシャルサイト □

ミニバン選び

最近、家に帰ってパソコンを開いては、家族で購入する車の情報収集に余念がない。色々と相談したり、ネット上の掲示板などを眺めては頭の中でシュミレーションを繰り返した。10年+α年乗るつもりで考えると最終的にはトヨタのノアに落ち着きそうである。今月の末か来月のあたまには注文する段取りとなっているのだが、まだ今月に特別仕様車も出るかもしれないので、虎視眈々と様子見である。

〈これまでの検討の経緯〉

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一年半程前の車検の相談時に、近所の三菱にディーラーからミラージュもそろそろ古くなってきたのではということで勧められた。実際に運転席に座ったり、電動バックドアの説明を受けたりしてミニバンへの密かな憧れを抱いた。しかし、当時はまだ家族使用のワゴンRもミラージュも何の不都合もなかったので、実際に購入を検討するまでに至らなかった。

v28982aスズキ エブリィワゴン

一年ほど前の話である。家族で使っている30万ほどで購入した中古のワゴンRの電装関係に不調が生じ始め、エアコンの効きも悪くなってきたため、来年の車検は通さずに新車を買おうかと少しずつであるが検討を始めた。しかし、660ccにしてはかなり車重があるため燃費が悪く、また内装もチープで長く乗る車ではないとのアドバイスをもらい、買い替え自体も頭の中からしばらく離れていった。

v32633aスズキ ランディ
子どもが生まれてからもずっと十数年前に登録されたワゴンRを家族で愛用してきた。しかし、2歳を過ぎて背がぐーんと伸びてきたため、チャイルドシートに座らせると、脚が真っ直ぐに伸ばせなくなってきた。ちょうどワゴンRの車検が夏に切れるので本気で車の買い替えの検討を始めた。人付き合いの都合からスズキの車をまず検討することになった。スズキのミニバンというと、「ランディ」なる全く初耳の車がまず俎上に上ることになった。内装も飽きがこない作りで、最後まで迷うところとなった。

v28534aトヨタ ヴォクシー
同時にスズキの代理店の方からヴォクシーのカタログももらった。どうしても怒って目がつり上がった出目金のようなフェイスが気に入らず、また内装もすぐに飽きがきてしまうようなメカニカルな作りが気に入らなかった。

v28255aトヨタ アイシス
モー ターファン別冊『最新 ミニバンのすべて』(三栄書房 2008)なる本を買ってきて、ページに穴が空くぐらいに、一台一台頭の中で運転する姿と家族を載せてドライブする姿を思い浮かべる日々が続いた。そうした中で、ふとセレナやノア、ステップワゴンのようにぎりぎりまで大きく作られている車は燃費も悪いし、キャンプやスキーに行く訳でもないのにあそこまでの車高が必要だろうかとの疑問が浮かんできた。そこで上記の三車の一つ下のクラスもいいのではないかと考えるようになった。
しかし、子どものことを考えると、やはり5ナンバーハイト系ミニバンの検討へと戻っていった。

v27591aフォルクスワーゲン ゴルフトゥーラン

毎日のように雑誌やネットで車の情報を吸収しているうちに、段々自分自身でもどのクルマを買って良いのか分からなくなってきた。そこでふと目に留まったのがこのクルマであった。TSIという新しいターボエンジンとDSGという新しい変速機のおかげでハイパワーと低燃費を両立しているとのことだ。早速カタログを請求し、気持ちも傾いていった。しかし、近くに販売店もないのに、長く乗るのは難しいだろうと諦めざるを得なかった。

v28705aトヨタ エスティマハイブリッド
ガソリン高騰を受け、すこしでも燃費の良い車と思い、探したところ急遽検討の土台に登ってきた。しかし、10年以上乗ろうと思うと、ハイブリッドは、燃費で元を取る以上に、故障などのメンテナンスに金が掛かるとのアドバイスを受け、検討対象からこぼれていった。

v28700aトヨタ エスティマ
ハイブリッドの方は諦めたものの、まだ普通のガソリン車の2.4ℓも捨て難い。トヨタの販売店で運転席に座らせてもらったところ、乗用車とは違う大きさを感じた。日常私が運転する訳ではないので、これまた諦めざるを得なかった。しかし、内装の落ち着いた高級感は気に入った。これは諦められないところだ。

v31473aマツダ・MPV
ネットの掲示板などを読んでいると、やはりミニバンはハンドリングなどの運転する楽しさに欠けるようだ。その点で、マツダのMPVは少々値は張るが、スポーツ的な運転感覚があるとのことだ。早速カタログを請求した。値引きもかなりしてくれるようであるが、全長がかなり長くて家族で乗るには少々不便を来すだろうとの判断から、検討レースから脱落していった。

v30054aホンダ ステップワゴン
カタログを請求したものの、10・15モードのコンマ以下の数字や内装の雰囲気がどうも好きになれず、食指が湧かなかった。車は長く付き合っていくものであるが、最初の第一印象がぱっとしなかったので、ほとんど検討の俎上に上げることはなかった。

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もう、トヨタのノアかスズキのランディのどちらかに絞って検討の最終段階へきたところで、雑誌でマツダの新しいミニバンが出るとの記事を読んだ。読んでしまった。大きさもまさにセレナやノア/ヴォクシーと同じ5ナンバーの凌ぎを削るクラスであり、俄然期待も高まった。しかし、発売日が夏ということで、カタログも手に入れることができず、検討することすらできなかった。

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頭の中での長い長い検討サバイバルと、これから10数年の車ライフと生活スタイルのシュミレーションを経て、トヨタのノアで決まりそうな塩梅である。しかしまだグレードやオプション、外装色が決定しておらず、ネットの新情報や「怪」情報、掲示板での噂に心が揺れる日が続きそうである。

『最高の人生の見つけ方』

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昼に子どもを公園やら「トイザらス」やらに連れ出して、さんざん疲れさせた揚げ句昼寝をした隙を狙って映画館へ出掛けた。
ジャック・ニコルソン、モーガン・フリーマン主演『最高の人生の見つけ方』(2007 米)という作品を観た。
片や貧しいながらも妻や三人の子どもから愛され続けてきたモーガン・フリーマン演じるカーターと、4度結婚しながら家族も友達もいないジャック・ニコルソン演じるエドワードの老人二人がひょんなことから同じ病室に入院するところから物語は始まる。二人はそれぞれ余命6ヵ月と宣告されるも、死を受容することができない。そこで二人は死ぬまでにしたいことをメモ用紙に書きつけ、男の欲望を満たす旅に出る。スカイダイビングやカーレースに臨んだり、万里の長城でバイクをかっ飛ばしたり、美女と遊んだり銃をぶっぱなしたりと破天荒でスリリングな旅を続けるうちに、二人の間に友情が生まれ始める。やがて、人間にとっての一番の幸せとは、周囲の人たちに愛され、そして周囲を幸せにしようとする人生を全うすることだと二人は気付き始める。
まったくこれまでの生き方に接点のなかった二人が、病院を抜け出しピラミッドの頂上で人生について語り合うというありえない展開を踏むのだが、二人の演技が上手くて最後まで見入ってしまった。最後は少し涙腺が緩んだ気がした。久しぶりの映画鑑賞であったが、良い映画に出会えた。
私にとって良い映画とは日常をすっかり忘れてしまう作品である。だから映画館で、

□ 映画『最高の人生の見つけ方』公式サイト □

『李陵・弟子・名人伝』

中島敦短編集『李陵・弟子・名人伝』(角川文庫 1968改版)に収められた『李陵』と『弟子』『名人伝』の3編を読む。
ちょうど現代文の授業で教科書の「安定教材」として殊に有名な『山月記』を扱っているので手に取ってみた。
『李陵』では、漢の時代に北方異民族の匈奴を相手に勇戦しながら、敵に寝返ったと誤解された悲運の将軍李陵と、その事件が原因で宮刑(男性の下腹部の切除)に処される司馬遷の心境が丁寧に描かれている。また『弟子』ではあくまで国家を中心に据えて道を説く孔子と、孔子に敬服しながらも国家の論理に圧殺されてしまう個人の正義感にこだわる子路の生き様を描く。
どちらの作品も、人生や社会はこうあるべきだという個人の倫理観と現実の衆愚社会の軋轢の中で、自分の信じるべき理想や生き方が受け入れられない不安を題材としていおり、読みごたえのある小説であった。
『山月記』と合わせて高校生に読ませたい作品であるが、古代中国を舞台にしているというだけで現代の高校生には「畏怖嫌厭の情」を起こさせてしまうかもしれない。こうした作品の面白さをあますところなく伝える力を磨いていきたいと思う。