冨樫森監督、竹野内豊・水野美紀主演『あの空をおぼえてる』(2008 ソニー・ミュージックエンタテインメント)を仕事帰りにララガーデンへ観に行った。それにしても映画はいい。映画の内容うんぬんよりも、映画館という日常生活から隔離された空間に身を置くだけで、普段たまりにたまったストレスが雲散霧消する気がする。
話の前半を観た限りでは、娘を交通事故で突然失ってしまい残された家族が、死を受け入れ再び家族としての絆を取り戻すというありがちな展開かと予想を立てていた。母役の水野美紀の演技が中途半端であり、お涙頂戴的な仕掛けが見え見えであった。しかし、中盤から子役の広田亮平くんと吉田里琴ちゃんの見事な演技にどんどん引き付けられてしまった。そして、後半は、家族たちが徐々に死を受容していくのと並行して、広田亮平くん演じる英治くんが見事に大人へと成長していく姿がスクリーンに大きく描き出される。話が進むにつれて顔も言葉遣いも変わっていくその成長ぶりに驚かされる。
ちょうど私が大学入学直前に池袋の名画座で観て深く感動した相米慎二監督の『お引っ越し』という作品に、話の展開や子役の演技が似ているなと思って観ていた。家に帰って冨樫森監督についてネットで調べたところ、冨樫監督は長く相米慎二監督作品の助監督を務めてた監督で「相米慎二監督の最後の弟子」とも言われているそうだ。合点がいった。
思い返せば、10年ほど前、ホームページを作り始めた頃、「勝手『お引っ越し』ファンサイト」なるものまで作っていたのだ。是非、相米監督作品『お引っ越し』と合わせて観て欲しい作品である。
□ 映画『あの空をおぼえてる』 オフィシャルサイト □