日別アーカイブ: 2008年3月30日

『旅の終りに』

五木寛之『旅の終りに』(講談社文庫 1990)を十数年ぶりに読み返す。
「艶歌の竜」こと人情派音楽プロデューサー高円寺竜三と、合理に徹し巨大音楽ビジネスを仕切る黒沢正信の両者の対決を通して、日本人の演歌(民族性)に馳せる思いを描く。『艶歌』『海峡物語』に続く「艶歌3部作」の最終作である。短い作品ではあるが、韓国の歌い手のパワーや日韓問題、80年代的な管理と自由のせめぎ合いといった色々なテーマが盛り込まれている。しかし、当時80年代半ばの五木氏の他の作品―『風の王国』や『冬のひまわり』―とテーマが類似しており、中途半端な読後感は否めない。