河合香織『セックスボランティア』(新潮社 2004)を読む。
障害者の性というタブーに果敢に挑戦したルポルタージュである。デリバリーの風俗嬢を依頼する脳性まひの男性や、マスターベーションの介助をするボランティア女性、結婚した障害者の夫婦の性生活を援助する介助スタッフ、またオランダにおける公費補助すら受けられるセックスサービスボランティア団体の実態を丁寧に追う。
食事や排泄、寝起き、移動など身のまわりの介助を、「ADL」(Activites of Daily Living)といって、これは「日常生活動作」と訳されている。これに対して、旅行や買い物、化粧などのお洒落などは、「QOL」(Quality of Life)といわれ、「生活の質」のことを指す。私は、「QOL」にセックスも入れるべきことではないかと思うのだが、現在の介助の現場ではほとんど触れられていない。
上記の考え方に基づき、著者はセックスの「ノーマライゼーション」のありようを求めて、セックスサービスを受ける側、提供する側、サービスを運営する側などにインタビューを試み、多角的に障害者向け性風俗サービスに関わる人間の内面に迫る。
障害者にとって性風俗を受けるというのは決して特殊なものではない。また、障害者の性を特殊なものにしようとする社会や家族の圧力に目をむけ、第三者としてではなく、第二者として関わることの必要性を説く。
1953年に出された厚生省のガイドラインでは、審査に基づく優生手術は、本人の意に反しても行なうことができ、やむを得ない場合は、拘束しても、麻酔を使っても、騙してもいいと明示されていた。とんでもない内容です。この法律は96年に改正されましたが、長い歴史の中で積み重ねられてきたマイナスイメージを払拭することは容易なことではありません。したがって、優生保護法が改正されてもなお、障害者は子どもを作ることすら認められないという現状があるのです。