相田みつを『新版 いちずに一本道 いちずに一ッ事』(角川文庫 1992)を読む。
新年最初の読書として、人生の応援歌になるような本をと思い手に取ってみた。しかし、著者相田さんは前向きな応援を否定し、人生負けることで、身の丈にふさわしい自分になれると説く。
人間というのは、途方に暮れる経験をすることが、いかに貴重であるかということを、私は言いたいんです。途方に暮れる経験がないと、人生はわからない。にっちもさっちもいかない、どこにも行く場がない。そういう経験が、皆さんにも必ずあると思う。右に行ってもダメ、左に行ってもダメ、南に行ってもダメ、北に行ってもダメ、どうにもしようがなくて、本当に途方に暮れる。そういう経験が人間の「いのちの根っこ」を育てていくんです。負けるってことが、いかに大事か。そのことを私は皆さんに訴えたいと思うんです。
しかし、相田さんは人生に負けることは大事だが、負ける人生を受け入れるだけの心身の健康を保てとも説く。
どんなことがあってもいい。挫折結構。失敗結構。大事なことは、そのことでいちばん大事ないのちを落とさぬことです。身体さえ丈夫であれば、何をやっても生きてゆけます。
人間にとっていちばん大事なものは、学歴でも肩書きでもお金でもありません。丈夫な身体と健康なこころ、これが最高の宝です。その他は枝葉、一時の飾りです。くよくよすることはありません。
相田さんは、落ち込んでいる人(人間誰しも落ちこぼれだが)を無理に引っぱり上げる言葉を掛けるのではなく、立ち上がるために踏みしめる土台を心にそっと置いてくれる。
自分が自分にならないでだれが自分になる
あのときの あの苦しみも あのときの あの悲しみも
みんな肥料になったんだなあ じぶんが自分になるためのともかく具体的に動いてごらん
具体的に動けば 具体的な答が出るから