芥川龍之介短編集『羅生門・鼻』(新潮文庫 1968)を読む。
芥川の「王朝物」第一集ということで、他に『芋粥』『邪宗門』など8編が収められている。今昔物語など古典をベースした文体で少々読みにくいところがあるが、テーマは人間の心理の妙をつくもので面白かった。『芋粥』の中で作者は次のように述べる。何気ない内容であるが、ふと心に染み入った。
人間は、時として、充たされるのか、充たされないのか、わからない欲望(芋粥を飽きるほど飲んでみたいといった類いの欲望)の為に、一生を捧げてしまう。その愚を哂う者は、畢竟、人生に対する路傍の人に過ぎない。